Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児診断(3)

(S429)

超音波検査で出生前診断された脳梁欠損症の2例

2 cases of Agenesis of the Corpus Callosum diagnosed by prenatal ultrasonography

城 大空, 吉田 敦, 三浦 清徳, 中山 大介, 吉村 秀一郎, 増崎 英明

Ozora JOH, Atsushi YOSHIDA, Kiyonori MIURA, Daisuke NAKAYAMA, Syuichiro YOSHIMURA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, NAGASAKI UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE

キーワード :

左右の大脳半球を結ぶ脳梁の形成は胎生20週頃に完成するが,発生早期に何らかの障害により脳梁原基が全く形成されない場合は脳梁完全欠損,原基の一部が形成されれば脳梁部分欠損になる.脳梁の形成障害は染色体異常に合併しやすいことが知られており,また様々な奇形症候群に合併することもあり,遺伝因子の関与が推測される.一方で他の奇形を合併しない例や,剖検の際に初めて脳梁欠損を指摘される例も少なからず存在している.胎児超音波検査が発達している現在では,胎児脳室拡大として異常を指摘される例が多い.今回,胎児脳室拡大を指摘され当科へ紹介され,超音波検査で脳梁欠損症を疑い,MRIを撮影し,診断に至った症例を2例経験したので報告する.
【症例1】
39歳 現病歴:妊娠初期より近医で妊婦健診を受けていた.妊娠28週2日に経腹超音波検査で胎児両側側脳室後角の拡大を指摘され当科へ紹介された.当院での経腹超音波検査では,胎児両側側脳室後角のみの拡張,第3脳室の拡張,透明中隔像の欠如の所見を認め,脳梁欠損症が強く疑われた.妊娠29週1日に胎児MRI撮影し,脳梁欠損症と診断した.児の発育は正常で,妊娠合併症も認めなかった.妊娠40週0日に3,000gの男児をApgar Score 8/9点(1分/5分)で経腟分娩した.出生後,児は小児科で診療を受けているが,生後3ヶ月現在,正常に発達している.
【症例2】
34歳 現病歴:妊娠初期より近医で妊婦健診を受けていた.妊娠34週0日に経腹超音波検査で胎児の脳室拡大,児頭大横径の増大を認め当科へ紹介された.当院での経腹超音波検査で症例1と同様に胎児両側側脳室後角のみの拡張,第3脳室の拡張,透明中隔像の欠如の所見を認め,脳梁欠損症が強く疑われ,妊娠34週2日に胎児MRIを撮影し,脳梁欠損症と診断した.児の発育は正常で,妊娠合併症も認めなかった.児頭大横径は正常上限よりやや高値のまま推移した.妊娠38週2日,3,330gの男児をApgar Score 9/9点(1分/5分)で経腟分娩した.出生後,児は定期的に小児科を受診しているが生後5ヶ月現在,正常に発達し異常所見は認めていない.脳梁欠損症は超音波検査で児頭大横径を計測する断面で胎児両側側脳室後角のみの拡張,第3脳室の拡張,透明中隔像の欠如の所見を認めた場合に強く疑われる.診断確定にはMRIが有用である.