山西 智未¹, 三宅 馨¹, 宮木 康成², 小柳 彩¹, 森本 識子¹

Tomomi YAMANISHI¹, Kaoru MIYAKE¹, Yasunari MIYAGI², Aya KOYANAGI¹, Satoko MORIMOTO¹

¹三宅医院産婦人科外来, ²岡山大福クリニック婦人科

¹obstetrics and gynecology, miyake clinic, ²gynecology, okayama oofuku clinic

キーワード :

【はじめに】
先天性疾患は新生児の約3％にみられるといわれており，決して少なくはない．近年の超音波画像診断の進歩により，多くの先天性疾患の出生前診断が可能となり，新生児の予後の向上に大きな影響を与えている．そのため胎児スクリーニング・出生前診断は重要になってきている．今回は当院で行っている技師による胎児心臓を中心としたスクリーニング方法と周産期管理への寄与について報告する．
【対象と方法】
対象は当院で妊婦健診を受けた2006年10月から2009年12月までの全妊婦名．スクリーニング項目は，1回目 18〜22週；〈頭部〉BPD，頭蓋骨，midline，脳室，小脳．〈顔面〉眼球，口唇．〈胸部〉横隔膜．〈心臓〉4 chamber，3 vessels view，左室流出路，右室流出路，Rhythm，CTAR．〈腹部〉胃泡，腎臓，膀胱，腹壁．〈四肢・骨格系〉脊柱，大腿骨．〈付着物〉臍帯，胎盤・胎児付着部，羊水量．2回目 27〜32週；〈顔面〉口唇．〈心臓〉4 chamber，3 vessels view，左室流出路，右室流出路，大動脈弁径，肺動脈弁径，大動脈弓，左右肺動脈，肺静脈，SVC-右房-IVC，上行大動脈，下行大動脈．〈腹部〉腎臓．このうち，胎児心エコー検査は，Spatio-Temporal Image Correlation（胎児心臓の3次元超音波データを記録保存しコンピューター内で再構築し，X・Y・Z3方向の軸回転と平行移動とを組み合わせて任意の直交3断面の動画を示す技術．以下，STIC）という方法を用いている．スクリーニング陽性症例は医師による記録画像での診断を行い，異常が指摘された場合は再受診とし胎児精査外来にて医師による診断を行う．
【結果】
精査となった（IUGRのような奇形以外も含む）338例のうち，異常が指摘されたのは71例であった．そのうち先天性心疾患は大動脈縮窄症，共通房室弁症，ファロー四徴症，総動脈幹症，完全大血管転移症など15例で，心臓以外の奇形は口唇裂，腹壁破裂，水腎症，potter症候群，臍帯ヘルニアなど40例だった．いずれも胎児期に高次病院へ紹介となった．
【まとめ】
当院のような一次周産期医療機関では異常胎児の早期発見と適切な高次医療機関への紹介が求められる．なかでも死亡率が高い先天性心疾患の出生前診断はきわめて重要である．STICを用いることにより精度の高い胎児先天性心疾患の診断を短時間に簡便に行うことが可能である．STICの有用性と周産期管理への貢献を再認識した．胎児スクリーニングは周産期医療の発展に必須であり，更なる検査技術の向上が求められる．