Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児診断(2)

(S427)

母親をサポートする上での超音波技師が果たす役割

The role that a supersonic ultrasonographer on supporting mother achieves.

田口 知里1, 川滝 元良2

Chisato TAGUCHI1, Motoyosi KAWATAKI2

1(医)ワイズレディスクリニック臨床検査科, 2神奈川県立こども医療センター新生児科

1Clinical Laboratory, Y’s lades clinic, 2Department of Neonatology, Kanagawa Children’s Medical Center

キーワード :

当院では医師の業務負担軽減と妊婦検診超音波サービス向上の為,平成14年より臨床検査技師が胎児超音波検査を行うようになった.技師全員が超音波検査未経験であったが,医師の指導の下胎児計測やスクリーニングを習得し,その後胎児心エコースクリーニング技術の必要性を感じるようになっていった.神奈川胎児エコー研究会(代表:神奈川県立こども医療センター 川滝先生)にて学ぶ機会に恵まれ,又県内の胎児診断に携わる医師の指導を受ける事が出来るようになり,それまで検出できなかった胎児心奇形もスクリーニングされるようになった.一次医療施設として,数ある中から異常な妊娠をふるい分けるという重要な役割があるが,胎児診断がその母子にとって良い結果となったのか,本当の答えを知る事は難しい.しかし胎児期にスクリーニングされた重症複雑心奇形症例4例(HLHS, DORV, d-TGAⅡ, asplenia)を例にあげてみると,胎児診断後の児の予後は様々だが,数年後次子の妊娠でも当院での分娩を選択された.(内2例は専門医の精査を希望)患児のことや新しい命への期待や不安について母親と語り合える事が,前回の妊娠の経過があったからこそ生まれた信頼関係といえるのではないかと考える.日々業務の中で妊婦検診を通じて悩みや不安を聞き,超音波画像による胎児の成長を母親と共に見守る事で,ふれあいを深めつつ産科的重要な情報を得られる事も少なくない.又,胎児の全身スクリーニングを行いながら,私たち技師から母親へ超音波検査を通じて伝えたい事は多い.奇跡的な胎児の成長・かわいらしい仕草・母体と胎児の効率的な血流関係・満期に向けての児の変化….わが子との絆を画像で見ることも母性の育みに重要であると実感している.しかし胎児スクリーニングでは胎位により描出精度が変わる為,複数回の再検が必要になる事がある.所見に悩む時は遠隔診断システム(埼玉県立小児医療センターとの連携)にて専門医の意見を仰ぐ事もある.母親が不安にならないよう十分説明し再検を行う等,いかに不要な不安を与えないか試行錯誤を重ねてきた.しかし一定の確率で先天異常が起こる事は統計で示されるように避けられず,スクリーニングを受ける母親の事前の同意や認識も必要である.明らかな胎児異常所見がある場合でも,医師の診察で母親への告知は慎重に行われている.疾患によっては技師から精査先へ予約を入れ,母親の様子に注意し精査受診の方法を再度説明する.必要があれば経験のある助産師のフォローへつなげる.精査後当院での管理・分娩可能な疾患である場合,経過のフォロー・他部署との連携・生後の対応等,症例ごとの検討課題は多いが,胎児診断と病診連携の発展により,二次・三次医療施設とのネットワークが広がり,確実に母親・家族の安心となっている.事実,胎児心奇形を指摘され,3rdオピニオンを経て当院でフォロー・分娩を選択した夫婦が『4つの病院の医師や技師がそれぞれの事を良く知っていて,つながっていることが嬉しくてとても安心した』と話していた.院内のアンケートで『超音波検査が検診の一番の楽しみ』という意見を頂く事があるが,スクリーニングで胎児異常が見つかれば,一瞬にして母親を奈落の底へ突き落としてしまう.産科クリニックの技師として大切な事は,胎児診断の重要性を理解し“母親が受け入れられる日が来る”と信じて,力強く動く胎児を母親と共に見守っていくことであると思う.不安を抱える母親の思いに耳を傾け,常に歩み寄る姿勢を忘れず,チーム全体・地域全体でsupportできるよう周産期医療の一員としての役割を果たしていきたい.