Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児診断(2)

(S425)

産科一次医療施設における検査技師による胎児スクリーニング検査の現状

Sonographic screening of fetal anatomy performed by sonographers in a private Ob/Gyn. clinic:our 6-year experience

辻村 久美子1, 佐々木 とし子1, 和泉 玲子2, 輿 トキ子2, 石本 人士3, 和泉 俊一郎3, 川滝 元良4

Kumiko TSUJIMURA1, Toshiko SASAKI1, Reiko IZUMI2, Tokiko KOSHI2, Hitoshi ISHIMOTO3, Shunichiro IZUMI3, Motoyoshi KAWATAKI4

1コシ産婦人科医院超音波検査室, 2コシ産婦人科医院産婦人科, 3東海大学医学部付属病院産婦人科, 4神奈川県立こども医療センター新生児科

1Clinical Laboratory, Koshi Obstetrics and Gynecology Clinic, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Koshi Obstetrics and Gynecology Clinic, 3Department of Obstetrics and Gynecology, Tokai University School of Medicine, 4Department of Neonatology, Kanagawa Children’s Medical Center

キーワード :

当施設は横浜市中心部に位置する産科一次医療施設(有床診療所)である.8年前より分娩の取り扱いは中止しており,現在は妊婦検診を中心とした産科診療を行っている.当施設に通院する妊婦は年間約500名で,そのうちの6割は分娩先である横浜市内の2つの産科二次医療施設と連携をとって妊婦検診を行っている.当施設における胎児スクリーニングの状況を報告する.
【方法及び対象】
当施設では妊娠12週以降の胎児スクリーニング検査は全例,検査技師2名(うち1名は認定超音波検査士)が担当している.通常の検査は胎児計測・羊水量観察(AFI)を中心とした「検診エコー」,それに加えて妊娠18週・28週には一人20分の予約枠を設け,「検診エコー」の検査項目に胎盤/臍帯と胎児の観察を加えた「胎児スクリーニングエコー」を行っている.「胎児スクリーニングエコー」の際,胎児部分に関しては心臓18項目を含むチェック方式の報告書を用いている.今回,検討の対象としたのは2003年7月〜2009年11月に胎児スクリーニング検査を施行した2,619例である.
【結果】
胎児スクリーニング陽性で三次医療機関に精査依頼をした症例は71例(71/2619,2.7%)であった.その中で最も多かったのは心臓領域46例で精査依頼症例全体の約6割を占めた.その内訳は①心臓血管異常が確認された症例35例(発症頻度35/2619,1.3%,内訳:ファロ—四徴症 5例,両大血管右室起始 1例,左心低形成症候群 1例,総肺静脈還流異常 1例,血管輪3例,肺動脈狭窄〔PS〕/心室中隔欠損〔VSD〕 1例,心臓腫瘍 1例,VSD 11例,左上大静脈遺残7例 ,右鎖骨下動脈起始異常 2例 ),②所見が確認された後,3次医療施設での管理となったが出生後は正常所見だった症例7例(軽度心拡大1例,軽度左室低形成3例,動脈管蛇行1例,動脈管瘤2例),③正常範囲と診断され通常の産科管理に戻った偽陽性症例6例(軽度心拡大1例,心臓腫瘍疑い2例,VSD2例,軽度PS 1例)であった.次いで多かったのは胸腹部異常12例(横隔膜ヘルニア2例,臍帯ヘルニア2例,卵巣嚢腫2例,泌尿器系疾患1例,腹水1例,腹部嚢胞性病変4例),中枢神経系異常8例(①精査にて所見が確認された症例4例:無頭蓋症1例・全前脳胞症1例・側脳室拡大2例,②正常範囲と診断され通常の産科管理に戻った偽陽性症例4例),顔面異常3例,その他2例であった.尚,出生後に判明した偽陰性症例は確認できた範囲で9例あり,その内訳は外表奇形4例,側頚部リンパ管腫1例,VSD 2例,鎖肛2例であった.
【考察及びまとめ】
当施設のような産科一次医療施設は,妊婦・胎児の状況を的確に見極めて分娩先を決定するという大きな役割の一端を担っている.特に胎児エコー検査はその中で重要な役目を負っており,当施設においては我々検査技師に課せられた責任は大きい.今回報告した検討結果の一つである心臓領域は,先天性疾患の中でも最も高頻度にみられ,またほとんどがローリスク妊娠から検出されることから一次スクリーニングの重要性が示唆されている.そのため当施設でも特に注意を傾けて検査を行っている.今回,心臓血管異常を全症例の1.3%で検出し,偽陰性例の把握は未だ不十分であるものの,ほぼ満足いく結果であった.今後スクリーニング精度の維持・向上のため,医師と綿密な連携をとりながら日常検査を遂行することが重要と考えている.また他施設に精査依頼した症例に関しては,その結果を追跡する努力を続けていくことも精度維持・向上に不可欠な要素であると考える.