Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児診断(1)

(S422)

胎児心臓スクリーニングにおける3VT viewの有用性

Clinical significance of the Three Vessels and Trachea View in Fetal Heart Screening.

辻村 久美子1, 佐々木 とし子1, 和泉 玲子2, 輿 トキ子2, 石本 人士3, 和泉 俊一郎3, 川滝 元良4

Kumiko TSUJIMURA1, Toshiko SASAKI1, Reiko ISUMI2, Tokiko KOSHI2, Hitoshi ISHIMOTO3, Shunichiro IZUMI3, Motoyoshi KAWATAKI4

1コシ産婦人科医院超音波検査室, 2コシ産婦人科医院産婦人科, 3東海大学医学部付属病院産婦人科, 4神奈川県立こども医療センター新生児科

1Clinical Laboratory, Koshi Obstetrics and Gynecology Clinic, 2Department of Obstetrics and Gynecolohy, Koshi Obstetrics and Gynecology Clinic, 3Department of Obstetrics and Gynecolohy, Tokai University School of Medicine,, 4Department of Neonatology, Kanagawa Children’s Medical Center

キーワード :

Three vessels and trachea view(3VTview)は,大動脈弓のスクリーニング断面として普及している.今回,我々は産科一次医療施設における胎児心臓スクリーニングで検出された3VT view単独の異常所見を呈した症例について検討したので報告する.
【対象及び方法】
2003年7月〜2009年11月の期間に胎児心臓スクリーニング検査を施行した2,619例中,スクリーニング陽性所見を呈したため3次医療機関にて精査を施行し所見が確認され診断が確定したのは46例(46 / 2,619,1.8%)であった.そのうち心臓四腔断面・流出路断面に明らかな異常所見を認めず,3VTviewのみで異常所見を呈した15例を対象とした.尚,検査施行の際にはカラードプラ法を適宜併用した.
【結果】
15例の内訳及び経過は以下のとおりである.①血管輪3例(発症頻度:3/2619,0.1%):内訳は右側大動脈弓+左鎖骨下動脈起始異常1例,重複大動脈弓(DAA)2例である.DAAの1例は重症気管軟化症を合併し,根治術後も人工呼吸管理から離脱できず生後2歳で永眠している.他の2例は症状発現前の生後約1カ月で予期的に手術を行い経過は良好である.②右鎖骨下動脈起始異常(ARSA)2例.③左上大静脈遺残(PLSVC)7例(発症頻度:7/2619,0.3 %).④動脈管瘤 2例.2例とも妊娠38週で指摘しており,出生後の経過はともに良好であった.⑤動脈管蛇行 1例.胎児期に動脈管早期収縮をきたすことなく,出生後も特記すべき所見は認めていない.尚,心外奇形に関しては,DAA1例で臍帯ヘルニアを合併した以外は,いずれの症例も染色体異常を含めた合併異常は認めなかった.
【考察及びまとめ】
3VT viewの観察範囲には胸部上方正中の大血管を含む胸腔内構築,すなわち大動脈弓,動脈管,上大静脈,そして気管・食道等が含まれる.今回,検出された所見のうち,所見そのものが疾患となるものは血管輪であった.血管輪の約80%は心内・外異常を伴わず単独で発症すると報告されており,3VTviewの観察なしには検出することは難しいと思われる.血管輪の出生後診断は困難を伴うことから,胎児診断が重要である.特にDAAでは今回の症例のように出生後に重症気管軟化症を発症する例もあることから,出生前の情報が重要と考えられる.また3VT viewの観察範囲の大血管にはいくつかの走行異常が存在することが指摘されており,今回の検討でもARSAやPLSVCのようなnormal variantの範疇に含まれる所見がみられた.これまでの報告ではこれらの所見が単独で見られた場合には臨床的意義が低いとする報告が多い.その一方,ARSAは染色体異常,特に21trisomyのソフトマーカーとしての可能性も報告されており,またPLSVCは左心系狭窄性疾患をはじめとする心内及び心外奇形合併との関連性を論ずる報告もあることから,これらの所見が検出された場合には精査の必要性を指摘する報告も散見される.また今回,動脈管に関する所見も3例見られ,いずれも出生後の経過は良好だった.動脈管瘤は出生後に血栓塞栓症を発症するリスクが指摘されていること,また動脈管蛇行所見は,右心負荷や動脈管早期収縮との関連性を指摘する報告があるものの,今後さらに症例を積み重ねて臨床的意義を検討することが必要な所見と思われる.産科一次医療における胎児スクリーニングで得られたこのような情報が,臨床の場で有効に活用されるために,従来に増して周産期医療の円滑な連携が望まれる.