Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児診断(1)

(S422)

STIC(spatiotemporal image correlation)法を用いた遠隔診断の有用性について

The utility of remote diagnosis with the STIC(spatiotemporal image correlation) method

佐藤 麻子

Asako SATO

美しが丘ウイメンズクリニック検査科

laboratory, Utukushigaoka Women’s Clnic

キーワード :

【はじめに】
当院では,おもに妊婦やその家族へのサービス的なものとして顔などの3D/4Dエコーを20週,28週,36週頃に実施してきた.数年前にSTIC法使用可能な超音波装置になってからは,胎児心エコースクリーニングを実施するようになり,異常を疑った場合,STICデータより専門医に診断してもらっている.今回は,その遠隔診断が非常に有用だった例を紹介したい.
【症例1】
24歳1妊1産.29週での定期健診において四腔断面が描写されず心奇形を疑った.その為STIC法を用いて遠隔診断を依頼.遠隔診断での所見は左室低形成,僧帽弁閉鎖,大動脈狭窄.転院後の精査入院での診断は,左室低形成,僧帽弁閉鎖,両血管右室起始症,大動脈弁狭窄,大動脈狭窄であった.
【症例2】
39歳0妊0産.29週での定期健診において,胎児胸部にエコーフリースペースが認められた.心臓やその他の異常所見はないように思われたが,念のためSTIC法での遠隔診断を依頼.遠隔診断での所見は胸水貯留以外には異常はなさそうだった.転院後,胎児胸水穿刺後は,再貯留もなく正期産にて出生した.出生後も胸水の再貯留は見られていない.
【症例3】
42歳2妊2産.26週2日の定期健診において,羊水過多が認められ胎児心スクリーニングを実施したところlarge VSD,四肢変形が認められ,STIC法にて遠隔診断を依頼.遠隔診断での所見はlarge VSD,Overlapping finger,耳介低置が認められ,染色体異常が疑われた.転院後の精査の結果,羊水過多,IUGR,大槽拡大,透明中隔拡大,心奇形,四肢変形等の所見を認め,胎児染色体異常(18トリソミー)を疑う.染色体検査の結果,18トリソミーと診断された.
【考察】
STIC法を用いての遠隔診断により,一次スクリーニングよりさらに上の1.5次スクリーニングが可能となった.今回あげた症例では,電子データの情報と実際の精査の検査結果とは,ほぼ同じ結果を得ることができた.よって,遠隔診断は極めて有用といえ,これからももっと普及していくべきだと考えられる.但し,あくまでもSTIC法は真の意味でのリアルタイムな情報ではなく装置によって作られた仮想の情報であることを忘れてはならない.そのためSTIC法にのみ頼ってはいけないが,補助的な役割としては非常に有用であるといえるだろう.