英文誌(2004-)
一般口演
消化器:消化管・腫瘍
(S420)
体外式超音波による大腸癌の術前病期診断の有用性(第4報)深達度誤診例の検討
Effectiveness of transabdominal ultrasonography in staging of colorectal cancer (4th report) - factors leading to misdiagnoses of tumor depth-
山下 直人1, 畠 二郎2, 筒井 英明3, 斉藤 あい4, 石井 学3, 今村 祐志2, 鎌田 智有3, 楠 裕明1, 春間 賢3
Naohito YAMASHITA1, Jirou HATA2, Hideaki TSUTSUI3, Ai SAITOU4, Manabu ISHII3, Hiroshi IMAMURA2, Tomoari KAMADA3, Hiroaki KUSUNOKI1, Ken HARUMA3
1川崎医科大学総合臨床医学, 2川崎医科大学検査診断学, 3川崎医科大学内科学食道胃腸科, 4川崎医科大学消化器外科
1epartment of General Medicine, Kawasaki Medical School, Kurashiki, Japan, 2Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, awasaki Medical School, Kurashiki, Japan, 3Gastroenterology Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School, Kurashiki, Japan, 4Department of Gastroenterological Surgery, Kawasaki Medical School, Kurashiki, Japan
キーワード :
【背景】
大腸癌の術前病期診断は,一般的に下部消化管内視鏡,X線造影,腹部CT,腹部超音波(以下US),超音波内視鏡等を施行し総合的に判断して決定されている.しかし,これらの検査を全て施行することは,侵襲性,経済性などの点で問題が残る.一方USは非侵襲的かつ安価な診断法であり,機器の改良に伴い消化管疾患の診断においてもその有用性が報告されるようになっている.我々は第79回,第81回,第82回日本超音波医学学術集会において,USによる大腸癌の術前病期診断の有用性について報告してきた.今回,深達度診断の誤診例について個々の原因をより詳細に検討し第4報として報告する.
【対象と方法】
2004年4月〜2008年12月までに当院で外科的切除を施行した大腸癌症例のうち,USによる術前診断が行われ病理診断との比較検討が可能であった173症例 (男性 100例,女性 73例,平均年齢69.7歳)を対象とした.USは全例無処置で施行し,機種は東芝SSA-700A,プローブは3.75MHzコンベックス,または6-7MHzリニアを使用した.深達度診断は,大腸癌取り扱い規約第6版に準拠し,SM,MP,SS〜SE(A),SI(AI)の4段階に分け評価した.173例中137例は深達度診断が病理所見と一致し,残り36例のうちUS所見の深達度を浅読みした21例をunder群,US所見の深達度を深読みした15例をover群に分類した.この両群の誤診の原因をUS所見と手術所見および病理学的所見を対比して検討した.
【結果】
under群:MPをSMと誤診した例は,腫瘍が半月ヒダ上にあり粘膜下層断裂の有無が判定できる画像が得られなかった1症例であった.SS〜SE(A)をMPと診断した症例は12例で,うち8例はごく僅かの漿膜浸潤しかなく,USによる筋層内浸潤との鑑別が困難と考えられた症例であった.もう4例は描出が不良であった症例で,うち3例が直腸癌症例であった.SI(AI)をSS〜SE(A)と誤診した症例は8例で,5例は大網や後腹膜などの脂肪浸潤の見落としで,残り3例は膀胱,十二指腸,小腸浸潤の見落としであった.over群:SMをMPまたは SS〜SE(A)と誤診した症例は4例で,1例は粘膜下層に多数の膿瘍形成をする特異な癌でスキルス大腸癌と誤診した症例,残り3例は画像が不良の症例で,内1例は腸重積の先進部となっていた.MPをSS〜SE(A)と誤診した症例は2例で,漿膜面の不整についての判断を誤った症例であった.SS〜SE(A)をSI(AI)と誤診した症例は9例で,4例は脂肪識浸潤を陽性と誤診した症例で,1例は膀胱浸潤を陽性と誤診した症例であった.残り3例は,小腸や腹壁に浸潤ありと判断し手術所見でも同様の所見であったが,病理所見で炎症性の癒着と判定された症例であった.
【結語】
深達度診断を誤診した36例中,ごく僅かの漿膜浸潤や,炎症性の癒着などのUSというmodalityの限界と考えられた症例は11例であった.また,漿膜面の不整についての判断や脂肪識や臓器浸潤の有無などの判断間違いによる症例は17例,画像不良による症例は8例であった.