Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管・腫瘍

(S419)

当院の胃癌90例における体外式超音波検査による診断能の検討(CTとの比較も加えて)

Evaluation of ultrasonography in diagnosis of gastric carcinoma.

北浦 幸一1, 山崎 智子1, 神作 慎也1, 山村 和博1, 長谷川 貴士1, 小原 正巳1, 高橋 浩二1, 本間 善之1, 若杉 聡2, 平田 信人2

Kouichi KITAURA1, Tomoko YAMAZAKI1, Shinya KANSAKU1, Kazuhiro YAMAMURA1, Takashi HASEGAWA1, Masami KOHARA1, Kouji TAKAHASHI1, Yosiyuki HONMA1, Satoshi WAKASUGI2, Nobuto HIRATA2

1亀田総合病院超音波検査室, 2亀田総合病院消化器内科

1Division of ultrasonographic examination, Kameda Medical Center Hospital, 2Division of gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
今回,我々は胃癌の術前超音波検査所見と術前CT検査所見,病理所見との比較検討を行った.
【対象と方法】
2008年4月から2009年10月までに当院で切除された胃癌90例(早期癌57例,進行癌33例)で,検査は全例で飲水法を施行した.これら胃癌90例の原発病変の描出率を,部位別,深達度別に検討し,描出可能であった原発病変において,胃癌取り扱い規約に則った深達度診断を行い,診断能を検討した.また,進行癌33例において,原発病変およびリンパ節転移の描出率を,胃癌術前検査として施行されたCT検査と比較検討した.
【結果】
原発病変の描出率は55.6%(50例/90例)であった.早期癌の描出率は31.6%(18例/57例)で,進行癌は97.0%(32例/33例)であった.進行癌で描出できなかった症例は,穹窿部後壁で深達度ss-seの病変であった.描出可能であった症例の割合を部位別でみると,穹窿部で60.0%(3例/5例),体部で47.5%(19例/40例),前庭部で62.2%(28例/45例)で,穹窿部で描出可能であった3例は,噴門部の進行癌であった.深達度別にみた描出率は,mで18.9%(7例/37例),smで55.0%(11例/20例),mpで100%(7例/7例),ss-seで95.4%(21例/22例),siで100%(4例/4例)であった.深達度診断で正診できた症例は28例で,正診率56.0%(28例/50例)であった.早期癌では正診率44.4%(8例/18例),進行癌は正診率62.5%(20例/32例)であった.病理深達度別にみた正診率は,mで28.6%(2例/7例),smで54.5%(6例/11例),mpで71.4%(5例/7例),ss-seで66.7%(14例/21例),siで25.0%(1例/4例)で,深達度mとsiで正診率が低かった.一方,進行癌33例におけるCT検査の病変の指摘率は72.7%(24例/33例)で,超音波での描出率(指摘率)より低かった.指摘された24症例はmp;3例(12.5%),ss-se;17例 (70.8%),si;4例 (16.7%)であった.超音波で描出(指摘)された進行癌32例でmp;7例(21.2%),ss-se;21例(63.6%),si:4例(12.1%)であるのにくらべ,mp症例の割合が少ない傾向にあった.病理所見でリンパ節転移を認めた症例は,90例中30例で,超音波検査のリンパ節転移の描出率(指摘率)は33.3%(10例/30例),CT検査の指摘率は33.3%(10例/30例)と同じであった.
【考察および結語】
病変の描出率は,超音波検査,CT検査ともに進行した症例ほど高くなる傾向にあった.超音波検査での進行癌の描出困難例は穹窿部病変であり,今後,穹窿部病変の診断が課題になると思われた.深達度診断は,進行例ほど正診率が高い傾向にあったが,siの診断が困難で,今後,体位変換なども加えた工夫が必要と思われた.進行癌のみの比較で,CT検査は超音波検査より病変の描出率(指摘率)が低く,mp症例で指摘されない症例が多い傾向にあった.リンパ節転移については,両検査における転移の診断基準に違いがあった.単純な比較は困難であるが,リンパ節転移診断においても超音波検査がCTとくらべても遜色ない診断能を有している可能性が示唆された.