Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:胆嚢

(S417)

造影超音波検査による胆嚢炎の診断評価は可能か

Validetion of contrast enhancement ultra sonography for the diagnosis of cholecystitis

菅 美樹1, 新畠 由紀1, 二宮 恵子1, 古谷 敬三1, 日高 聡2, 上原 貴秀2, 平岡 淳2, 二宮 朋之2, 道堯 浩二郎2

Miki KAN1, Yuki SINNBATA1, Keiko NINOMIYA1, Keizo FURUYA1, Satoshi HIDAKA2, Takahide UEHARA2, Atushi HIRAOKA2, Tomoyuki NINOMIYA2, Koujirou MITITAKA2

1愛媛県立中央病院検査部, 2愛媛県立中央病院消化器内科

1Department of Medical Laboratory, Ehime Prefectural Central Hospital, Ehime, Japan, 2Department of Gastroenterology, Ehime Prefectural Central Hospital, Ehime, Japan

キーワード :

【はじめに】
急性胆嚢炎(以下胆嚢炎)は,頻度の高い疾患であるが臨床症状が乏しい症例では診断に苦慮することがある.また腹部超音波検査(以下Bモード)と造影CT検査と所見が乖離することも経験する.造影超音波検査(以下CEUS)の胆嚢炎診断における有用性について検討した.
【対象】
対象は平成21年3月〜平成21年11月の間に自他覚所見より胆嚢炎を疑いBモード,造影CT検査,CEUSを施行した21症例と,コントロール群として転移性肝癌のスクリーニングを施行した13症例である.
【方法】
CEUSは右季肋部走査にて胆嚢壁をターゲット病変としてソナゾイド懸濁液を0.5ml静注し,胆嚢壁の輝度が充分に上昇するまで動画連続記録を行った.胆嚢壁にROIを設定し,TIC(Time Intensity Curve)解析を行い,胆嚢壁のソナゾイド流入開始時間(T1),ピーク時間(T2),T1,T2でのゲイン,T2からT1を差し引いた加速時間(以下ACT)を測定,TICの傾きを近似曲線より算出した.Bモード,CEUSにはHITACHI EUB-7500,コンベックスプローブ(周波数1〜5MHZ)を用い,MI値は0.25に設定した.Bモードで胆嚢長短径,胆嚢壁厚径,デブリス貯留の有無を,CEUSでACT,近似曲線の傾きを検討項目とした.胆嚢炎を疑う基準は,Bモードでは胆嚢の短径3.0cm以上,壁厚3mm以上,テブリスの有無のうち短径3.0cm以上を必須項目として2項目以上(参考文献:超音波検査技術腹部超音波テキスト 日本超音波検査学会発行)がある場合とした.胆嚢炎の臨床上確定診断基準は造影CT検査で胆嚢周囲脂肪織の毛羽立ち像がみられる場合,胆嚢穿刺液培養検査で菌が検出された場合,もしくは手術で炎症の存在が証明された場合とした.
【結果】
上記基準により21例中18例が胆嚢炎と診断された(胆嚢炎群).TIC解析は,コントロール群ではACT15.8±7.1秒,近似曲線の傾き1.34±1.26であった.一方,胆嚢炎群ではACT9.3±3.1秒,近似曲線の傾き4.16±2.31で胆嚢炎群のACTは有意に短縮し近似曲線の傾きは急峻であった(P<0.01).胆嚢炎群のうち,Bモードでは10例,CEUSでは,ACT15.8秒,近似曲線の傾き1.34以上を胆嚢炎の診断基準とすると17例が胆嚢炎と診断できた.CEUSで胆嚢炎が診断できなかった1例は,造影CT検査では毛羽立ち像がみられ,内視鏡的に経乳頭的胆嚢ドレナージ術が施行された.造影CT検査で13例に胆嚢周囲の脂肪織の毛羽立ち像がみられたが,毛羽立ち像がみられなかった5例は,CEUSでは胆嚢炎が疑われ病理学的診断及び培養検査においても胆嚢炎と診断された.胆嚢炎診断におけるBモードの感度,特異度,陽性適中率,陰性適中率はそれぞれ,55.6(10/18),100%(3/3),100%(10/10),27.3%(3/11),であった.CEUSではそれぞれ,94.4(17/18),100%(3/3),100%(17/17),75.0%(3/4)であった.胆嚢炎と診断されなかった3例はBモード,CEUSとも胆嚢炎を疑う変化はみられなかった.
【考察】
Bモード検査にCEUSを加えることで造影CTにおける変化がみられる以前に感度よく急性胆嚢炎が診断できる可能性が示唆された.