Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:胆嚢

(S417)

胆嚢壁内高エコー結節の病理学的検討

Pathologic findings of high echoic nodule of gallbladder wall in Ultrasonography

小宮 雅明1, 北浦 幸一1, 小原 正巳1, 山崎 智子1, 石井 久美子1, 高橋 浩二1, 磯部 幸子1, 神作 慎也1, 若杉 聡2, 平田 信人2

Masaaki KOMIYA1, Kouichi KITAURA1, Masami KOHARA1, Tomoko YAMAZAKI1, Kumiko ISII1, Kouji TAKAHASHI1, Sachiko ISOBE1, Shinya KANSAKU1, Satoshi WAKASUGI2, Nobuto HIRATA2

1亀田総合病院超音波検査室, 2亀田総合病院消化器内科

1Ultrasonography Room, Kameda Medical Center Hospital, 2Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査で胆嚢壁内に類円形の高エコー結節を認めることがある.この高エコー結節の病理学的所見,臨床的意義について検討した報告は少ない.今回われわれは,胆嚢壁内に類円形高エコー結節を有する症例の病理組織像と画像所見の比較検討を行ったので報告する.
【症例1】
58歳,男性.糖尿病,胃癌術後の経過観察のため通院中であった.2005年8月の超音波検査で胆嚢底部に20mm大の隆起性病変を認めたため,精査,加療目的に入院した.超音波検査では胆嚢底部の腫瘤内に淡い類円形高エコー結節を数個認め,石灰像もともなっていた.手術の結果,底部の腫瘤内にはコレステリンクレフトや胆汁と,それを取り囲む炎症性細胞からなる,種々の肉芽が多発しており,黄色肉芽腫性胆嚢炎と診断された.
【症例2】
46歳,女性.1年前からときどき食後の心窩部痛を訴えていた.1か月前から痛みの頻度が増してきたため,当院受診した.腹部超音波検査では,胆嚢壁は全体が肥厚し,内腔がきわめて小さかった.肥厚した壁内に拡張したRAS,コメットエコーと,大小の類円形高エコー結節を多数認めた.これらは,MRIのT1強調像で高信号,T2強調像でも高信号であった.胆嚢摘出術の結果,壁内の高エコー結節は,壁内結石,濃縮胆汁など,多彩な内容のRASで,周囲に炎症をともなっていた.底部の結節の1個は膿瘍であった.
【症例3】
44歳,男性.3か月前に心窩部を訴え,近医で胆嚢炎,胃潰瘍と診断され,当院受診した.超音波検査で胆嚢壁内に小類円形高エコー結節とコメットエコーを多数認め,胆嚢壁全体が肥厚していた.MRIではT1強調像で高信号,T2強調像で低信号で,出血したRASを疑った.手術の結果,胆嚢内にRASを認め,RAS内に充満する,結石ないし濃縮胆汁を認めた.RASは一部に破綻した部分を認め,その周囲は炎症性細胞浸潤はないものの,線維化を認め,比較的最近の炎症の存在が疑われた.
【症例4】
41歳,女性.1か月前に背部痛を訴え,近医受診した.尿路結石を疑われ,精査したが異常所見なく,当院消化器内科受診.超音波検査で,胆嚢体部に約10mmの隆起を指摘されたが,その内部は周囲の外側高エコーより軽度高エコーの類円形結節像を認めた.MRIではT1強調像で高信号,T2軽度強調像で高信号で濃縮胆汁の充満したRASが疑われた.手術の結果,胆嚢の隆起部に10mmのRASを認め,内部に結石ないし胆汁成分を認めた.RASの周囲は,通常の胆嚢腺筋腫症にくらべて,線維化がつよく,最近の胆嚢の炎症を示唆した.
【考察】
胆嚢内に高エコー結節を有する症例を4例経験した.これらを検討すると,結節は,胆石ないし濃縮胆汁が充満したRAS,膿瘍,(黄色)肉芽など,多彩であった.共通した点は,通常の胆嚢腺筋腫症にくらべて炎症がつよい点であった.胆道内圧の上昇などがきっかけで胆嚢腺筋腫症に炎症が加わった場合,RASの開口部が浮腫,線維化などで狭窄し,内部の胆汁が流出しにくくなると思われ,それが胆汁の濃縮,ひいては結石の生成につながるものと推察した.また,これらにRASの破綻が生じると,膿瘍,肉芽の形成がおこると思われた.黄色肉芽腫性胆嚢炎と胆嚢腺筋腫症の関係を論じた症例報告は少ないながらみられ,その病態機序を考える上で興味深いと思われた.
【結語】
胆嚢壁内の高エコー結節について検討した.胆嚢内のRASに炎症が加わることが関係していると思われた.