Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:膵臓

(S416)

膵癌の進展度診断におけるCTと超音波検査との比較

Stage of pancreatic carcinoma-Ultrasonography diagnosis and CT diagnosis

若杉 聡1, 2, 平田 信人1, 山村 和博2, 北浦 幸一2, 山崎 智子2, 小宮 雅明2, 小原 正巳2

Satoshi WAKASUGI1, 2, Nobuto HIRATA1, Kazuhiro YAMAMURA2, Kouichi KITAURA2, Tomoko YAMAZAKI2, Masaaki KOMIYA2, Masami KOHARA2

1亀田総合病院消化器内科, 2亀田総合病院超音波検査室

1Department of Gastroenterology, Division of Internal Medicine, Kameda Medical Center Hospital, 2Ultrasonography Center, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
近年CT,MRI検査が膵癌の診断に有用であるという報告が多い.一方超音波検査は盲点が多く,当院の症例の検討でも,超音波検査は膵尾部,膵鈎部の病変で見落とされる症例が多い.しかし,超音波検査は画像が描出された場合,その空間分解能はCT,MRIよりすぐれていると思われる.今回,我々は膵癌と診断され,超音波検査とCT検査で進展度診断をこころみた症例で,CT検査と超音波検査の診断能の比較検討を行ったので報告する.
【対象と方法】
対象は2007年9月〜2008年12月の期間に当院で精査,加療された膵管癌のうち,超音波検査と造影CT検査で進展度診断が試みられた42例である.膵癌取扱い規約に則ってこれらの症例のTS,R,Rp,DU,CH,PV,A,N因子を超音波検査とCTで評価した.42例での一致率を検討するとともに,手術された7例では,正診率の比較も試みた.
【結果】
TS因子一致例は30例(71%)であった.S因子一致例は27例(64%)であった.Rp因子一致例は32例(76%)であった.DU因子一致例は32例(76%)であった.CH一致例は34例(81%)であった.PV因子一致例は29例(69%)であった.A因子一致例は26例(62%)であった.N因子一致例は30例(71%)であった.H因子一致例は40例(95%)であった.P因子一致例は35例(83%)であった.不一致例において超音波検査がCT検査にくらべて進展していると評価した症例と,進展していないと評価した症例を比較すると,すべての因子でほぼ同数であった.手術が施行され,病理組織学的な進展度診断がなされた7例を基準として,超音波検査とCT検査の正診例を比較したところ,TS因子では超音波検査(以下U)5例,CT検査(以下C)4例であった.S因子ではU6例,C6例であった.Rp因子ではU4例,C5例であった.DU因子ではU3例,C5例であった.CH因子ではU7例,C5例であった.PV因子ではU6例,C6例であった.A因子ではU7例,C6例であった.N因子ではU3例,C2例であった.
【考察】
膵管癌の進展度診断において,それぞれの因子における超音波検査とCT検査の一致率は70%前後であった.不一致例の検討で,超音波検査の方が進展したと診断した症例とCT検査の方が進展した症例の数がほぼ同数であることを考慮すると,どちらかが余分に進展度を誤っているとはいえないと推察した.手術された7例の検討でも,明らかにCTが勝っているという因子はDU因子であると思われた.PV,A因子については,あきらかなPV(-),A(-)症例を選択して手術しているため,参考にはならないが,それ以外の因子については,必ずしも超音波検査が劣っているとは思われなかった.近年のCT検査機器の改良により超音波検査にくらべて検査時間が短く手軽になっている印象があるが,放射線科医の読影時間を考慮すると,検査から診断までの時間は超音波検査と大差がない.また,空間分解能はあきらかに超音波検査が造影CTに勝る.さらに,病変部の可動性をリアルタイムで観察できる点,体位変換による所見の変化を手軽に観察できる点など,CTよりすぐれた点も多い.検査に習熟した医師,技師が行う超音波検査は,CTより劣っていることはないと思われる.
【結語】
すくなくとも,膵癌の進展度診断については,CT検査と超音波検査の正診率に差がないものと考える.今後,症例を重ねて検討したい.