Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:膵臓

(S415)

体外式超音波における膵胆管合流部の超音波診断

Ultrasonographic Diagnosis of Connection of Pancreatico-Biliary Ducts

内田 浩也1, 佐藤 信浩1, 登尾 薫1, 山野 愛美1, 井谷 智尚2, 奥野 敏隆3

Hiroya UCHIDA1, Nobuhiro SATO1, Kaoru NOBORIO1, Megumi YAMANO1, Toshinao ITANI2, Toshitaka OKUNO3

1西神戸医療センター臨床検査技術部, 2西神戸医療センター内科, 3西神戸医療センター外科

1Department of Clinical Laboratory, Nishi-Kobe Medical Center, 2Department of Internal Medicine, Nishi-Kobe Medical Center, 3Department of Surgery, Nishi-Kobe Medical Center

キーワード :

【はじめに】
膵胆管合流異常には胆道癌が高率に合併する.しかし,体外式超音波(以下US)での膵胆管合流部の描出は比較的困難であるとの認識が一般的であり,胆管拡張像や胆嚢壁肥厚などの間接所見を契機に発見されることが多い.USでのスクリーニングにおいて直接的に膵胆管合流部の観察がなされれば,合流異常の早期発見につながりその臨床的意義は大きい.今回我々は,USにおける合流部描出の検討を行い若干の知見を得たので報告する.また,合わせて膵胆管合流異常症例についても提示する.
【対象および方法】
対象は,2008年7月から2009年7月に腹部超音波検査を行った成人で,比較的消化管ガスの影響が少なく膵頭部が体表から6cm以内に観察された男性54名,女性111名の計165名.使用機器はGE Healthcare社製 LOGIQ7.探触子は4Cおよび9Lを用いた.検査には飲水等の前処置は行わず,膵内胆管,鈎部膵管,Vater乳頭部の描出を試みた.Vater乳頭部での胆管と膵管の連続が確認できたものを膵胆管合流部描出例とした.各描出率および深度別合流部描出率,胆管径,膵管径を検討した.
【結果】
 膵内胆管の描出率は165例中156例(約95%)であった.鈎部膵管の描出率は165例中111例(約67%)であった.Vater乳頭部の描出率は165例中123例(約75%)であった.膵胆管合流部の描出は165例中88例(約53%)であった.合流部非描出例77例で膵管の描出が不良であったものは68例(約88%)であった.体表からの深度別での合流部描出率は,体表より2cmで約89%,3cmで約55%,4cmで約68%,5cmで約32%,6cmで25%であった.膵内胆管の平均径は約3.3mm,鈎部膵管の平均径は約1.7mmであった.
【考察】
 膵胆管合流部の描出は困難であるとの認識が一般的である.しかし,今回の検討によって比較的検査条件の良好な場合ではあるが,体表より4cm以内に膵頭部があれば50%以上の確率で合流部の観察が可能であった. 合流部となるVater乳頭部の認識は全体の約75%で可能であったが,そこに連続する主膵管の描出が困難であった例が非描出例の約88%を占めていた.鈎部膵管の平均径は約1.7mmであったが,乳頭部付近で線状になる症例が多く見られ,この細い膵管の認識は機器の分解能に比例するため深い部位ほど描出率は低下していた.合流部の認識を困難とする要因として主な原因は膵管径にあると考えられ,描出率向上のためには膵管の認識率を上げることが重要であると考えられた. 膵胆管合流異常の超音波診断については諸家の報告が見られ,合流部自体の描出は可能であることが報告されている.しかし,合流異常の診断に超音波が用いられることは少なく,ERCPやMRCPでの診断がなされていると思われる.また,合流異常におけるUSは,胆管拡張等の間接所見を拾い上げることが主な役割であると捉えられている.  しかし,今回の検討により,合流部描出は可能であり,合流部の直接的な描出により胆管非拡張型の拾い上げ診断も期待できると考えられる.
【結語】
膵胆管合流部の超音波像について検討し,観察が可能であることが示された.USでは合流部は描出できないという先入観を捨て,合流部の詳細な観察が行えるツールであることを再認識し日常診療にあたることで,膵胆管合流異常の早期発見に寄与するものであると考える.