Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:その他

(S414)

十二指腸・小腸疾患の緊急手術症例の超音波検査の検討

Ultrasonography of emergency operation case of duodenum and small intestine

伊藤 将倫1, 竹田 欽一2, 宇都宮 節夫2, 多賀 雅浩2, 川田 登2, 秦野 貴充1, 今泉 延1

Masatsugu ITO1, Kinichi TAKEDA2, Setsuo UTSUNOMIYA2, Masahiro TAGA2, Noboru KAWATA2, Takamitsu HATANO1, Tadashi IMAIZUMI1

1名古屋共立病院画像課, 2名古屋共立病院消化器内科

1Department of image section, Nagoya kyouritsu hospital, 2Department of Gastroenterology, Nagoya kyouritsu hospital

キーワード :

【はじめに】
十二指腸・小腸疾患は急性腹症をともない救急外来を受診されることが多く,緊急手術の対象となることがしばしば経験される.診断には超音波静止画像のみでなく,消化管壁の形態や内容物の性状・動きなどを含めた総合的な診断を行う必要がある.腹部超音波検査は,gasの影響にて消化管診断には不向きとされてきたが,近年,数多くの消化管疾患に対する腹部超音波検査の有用性が報告され,今や消化管領域の新たな診断法として不可欠な検査の一つとなってきた.今回,当院で施行した十二指腸・小腸疾患の緊急手術症例における術前の腹部超音波検査結果をretrospectiveに検討したので報告する.
【対象・方法】
対象は,2006年1月から2009年12月までの48ヶ月間に十二指腸・小腸疾患症例における緊急手術症例:167例である.このうち,術前超音波検査を手術同日に施行した53症例(男性:34名,女性:19名 平均年齢:62.8歳)を検討した.症例の内訳は,十二指腸穿孔:8例,絞扼性イレウス:22例,癒着性イレウス:7例,GIMT:3例,ヘルニア:9例,メッケル憩室:1例,壊死型小腸炎:1例,非閉塞性腸間膜虚血症:2例.検討項目としては,術前に施行した腹部超音波検査結果をもとに術中所見および組織学所見と比較した.
【結果】
結果として正診率は64.2%(34/53例)であり,検査中の嘔吐や消化管gasが理由で超音波検査にて評価困難症例は約13.2%(7/53例)であった.各症例別正診率は,十二指腸穿孔:62.5%(5/8例),絞扼性イレウス:81.8%(18/22例),癒着性イレウス:0%(0/7例),GIMT:100%(3/3例),ヘルニア:66.7%(6/9例),メッケル憩室:100%(1/1例),壊死型小腸炎:100%(1/1例),非閉塞性腸間膜虚血症:0%(0/2例).GIMTなどの症例は有用であった.
【考察】
癒着性イレウスに関しては,絞扼性イレウスなどと誤診した症例が多く認められた:71.4%(5/7例).各症例では,消化管gasなどによって病変部が描出できない場合を除けば高い正診率となった.
【結語】
小腸・十二指腸疾患の緊急手術時の超音波検査は,消化管gasや患者状態悪化のため詳細な観察が困難なことが多い.しかし,超音波検査にて病態を早く確認し判断することによって,有用な検査になりうる可能性がある.