Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:その他

(S412)

使用実態下における超音波造影剤ソナゾイドの安全性ならびに有効性の検討

The safety and efficacy of ultrasound contrast media SONAZOID in clinical practice

早川 晶子1, 千早 正光1, 森 義弘1, 阿部 研自2, 谷川 雅俊1, 高橋 周美1, 成瀬 英典1, 小宮 雅弘1

Akiko HAYAKAWA1, Masamitsu CHIHAYA1, Yoshihiro MORI1, Kenji ABE2, Masatoshi TANIGAWA1, Megumi TAKAHASHI1, Hidenori NARUSE1, Masahiro KOMIYA1

1第一三共株式会社学術調査部, 2第一三共株式会社データサイエンス部

1Post-Marketing Study Department, DAIICHI SANKYO CO., LTD, 2Clinical Data and Biostatistics Department, DAIICHI SANKYO CO., LTD

キーワード :

【目的】
ソナゾイド(SONAZOID)は,2007年1月に第二世代の超音波造影剤として「超音波検査における肝腫瘤性病変の造影」の効能・効果で世界に先駆け本邦で発売された.本剤の安全性,有効性については,開発治験段階の限られた条件・数の対象患者でしかデータが得られておらず,本剤発売以降,様々な患者背景を有する多数の症例での本剤の安全性,有効性に関するデータの蓄積とその評価が望まれてきた.そこで,本剤発売以後の使用実態下での安全性ならびに有効性を検討することを目的として使用成績調査を実施した.
【対象および方法】
本調査は目標症例数3,000例として2007年9月〜2009年8月の期間で実施した.本調査の契約施設(約250施設)から各施設の契約例数に対応する連続症例について,患者背景,本剤の使用目的,投与状況,有効性に関する項目,有害事象の発現状況等の情報を収集した.
【結果】
収集された3,591例のうち,本調査内で同一症例に対して2回以上のソナゾイドによる検査が施行された重複症例221例を除いた安全性評価対象症例3,370 例中,有害事象は72 例(106 件),うち副作用は17 例(22 件)に認められ,副作用発現率は0.5%(17/3,370 例)であった.副作用の内訳として,嘔吐,下痢,頭痛,蕁麻疹,そう痒症,湿疹,倦怠感がそれぞれ2件,その他の副作用についてはいずれも1件のみであり,重篤な副作用は認められなかった.安全性評価対象から除外された重複症例221例においても副作用発現状況を検討したが,本剤の複数回使用による副作用の発現傾向の増加は認められなかった.同様に,本剤の投与歴の有無についても,副作用発現への影響は認められなかった.また,非臨床において消化管粘膜の病変および肺での軽度の炎症性病変が認められたことから消化管疾患を有する患者,本剤の排泄器官である肺等に基礎疾患を有する患者における安全性を検討した.さらに,海外で販売されている類薬において,基礎疾患として冠動脈疾患を有する患者に心筋虚血あるいは心筋梗塞を伴う徐脈,低血圧が認められたことから,心血管系疾患あるいは血管障害の既往等を有する患者における安全性についても検討したが,いずれも副作用発現に影響は認められなかった.本調査期間の本剤の使用目的については,肝腫瘤性病変の精査・確定診断に用いられた症例が約6割を占めていたが,その他,スクリーニングや局所治療における超音波ガイド,治療効果判定等,肝腫瘤の治療・診断の様々なステップにおいても使用されていた.「超音波検査における肝腫瘤性病変の造影」以外に本剤を使用した症例(適応外使用)を除いた有効性評価対象3,235例において,血管イメージング,クッパーイメージングの有効率はそれぞれ92.8%,93.5%であり,各検査目的における総合評価の有効率は94.4%であった.
【結論】
本剤発売後3年が経過し,肝腫瘤性病変の診断・治療の現場で活用されており,近年本剤の詳細な使用条件や特徴ならびに造影時の工夫等についてさまざまな報告がなされている.今回,使用成績調査として使用実態下における3,000例以上の本剤使用例のデータを収集し,安全性,有効性について検討したが,重篤な副作用も認められず,安全に造影検査が施行可能であるとともに,臨床現場においても9割を超える症例で本剤の有効性が認められたことから,ソナゾイドを用いた造影超音波検査は,有用な肝腫瘤性病変の診断・局所治療ガイド・治療効果判定に使用可能なモダリティの1つとして位置づけられると考えられる.