Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管

(S410)

メッケル憩室の超音波像の検討

Imaging manifestations of Meckel’s diverticulum

青松 友槻1, 余田 篤1, 井上 敬介1, 平松 昌子2, 尾方 章人2, 芥川 寛3, 江頭 由太郎3, 玉井 浩1

Tomoki AOMATSU1, Atsushi YODEN1, Keisuke INOUE1, Masako HIRAMATSU2, Akihito OGATA2, Hiroshi AKUTAGAWA3, Yutarou EGASHIRA3, Hiroshi TAMAI1

1大阪医科大学小児科, 2大阪医科大学一般・消化器外科, 3大阪医科大学病理学教室

1Pediatrics, Osaka Medical College, 2General and Gastroenterological Surgery, Osaka Medical College, 3Pathology, Osaka Medical College

キーワード :

【緒言】
メッケル憩室(MD)は胎生期に消失すべき卵黄嚢管の遺残により生じる小腸の真性憩室である.頻度は全人口の1〜2%であるが,多くは無症状で経過する.約4%が出血,腸閉塞,憩室炎,穿孔などを引き起こす病的MDであり,高率に異所性胃粘膜や異所性膵組織を有する.診断には異所性胃粘膜を標的としたメッケルシンチが用いられるが,しばしば偽陰性となる.異所性胃粘膜は消化管の様々な部位や胆嚢など多くの臓器に出現するので,陽性でもMDとの厳密な質的診断はできない.CTや消化管造影の感度は低く,MDの描出は困難な場合が多い.近年,体外式超音波(US)で微小な病変の描出や詳細な画像解析が可能となってきたが,MDの詳細なUS所見に関する報告は未だ皆無に近い.2008年1月から2009年12月の間に当科で経験したMD3例全例がUSで描出された.組織所見との比較やソナゾイド造影も行い,興味深い知見を得たので報告する.
【症例1】
7歳男児.下血と嘔吐を主訴に来院し,Hb10.0g/dlと貧血を認めた.入院直後に行ったUSで右下腹部憩室が描出された.メッケルシンチが陽性であり,手術でMDと確定診断された.
【症例2】
1歳男児.鮮血便を主訴に前医受診,Hb7.5g/dlと貧血を認めた.メッケルシンチは陰性で,CTでも原因は特定できなかった.当科へ転院した直後に施行したUSで上腹部に憩室が描出された.小腸造影も行ったが憩室は描出できなかった.間歇的な下血によりHbは5.8g/dlに低下したため濃厚赤血球を計4単位輸血した.手術(第19病日)でMDと確定診断され,憩室の管腔側全体に異所性胃粘膜を認めた.
【症例3】
5歳女児.2008年から2009年にかけて小腸小腸型腸重積を2回反復した.メッケルシンチは陰性であった.1回目の腸重積整復後(高圧浣腸),小腸造影,CTを施行したが原因は特定できなかった.2回目の腸重積整復後(高圧浣腸)に施行したUSで憩室が右下腹部に描出され,先端部の第2層が著名に肥厚していた.手術でMDと確定診断され,憩室の先端部に異所性膵組織と少量の異所性胃粘膜を認めた.
【US所見】
3症例ともMDは低エコー輝度の小腸壁の部分的な肥厚として認識された.正常回腸と連続しており,壁には5層構造が認められた.第2層の肥厚が印象的で,管腔側は凹凸不整であった.カラードプラによる血流シグナルは症例1,症例2ではほとんど検出されなかったのに対し,症例3はスポット状に少量のシグナルが検出された.症例2はソナゾイド造影も行った.壁の血流は乏しく,腫瘍を疑わせるような不整な血管は認めなかった.また,栄養血管と思われる直線状の拍動性血管が描出された.
【考察】
正常小腸と連続した5層構造が保たれている小腸の部分的な壁肥厚は真性憩室である可能性があり,MDも念頭に置く必要がある.病変が盲端で終ることをUSで把握するのは必ずしも容易ではない.組織所見と比較すると,第2層の肥厚は異所性胃粘膜や異所性膵組織を反映したものであり,合併症を引き起こすリスクが高いMDに特徴的なUS所見と考えられた.異所性胃粘膜や異所性膵組織を有さないMDは正常小腸と区別し難いためUSで描出することは困難かもしれない.血流シグナルの多寡は,栄養血管や憩室炎の有無などにも影響されるので解釈には注意が必要である.ソナゾイド造影は詳細な血流評価が可能であるため,炎症性疾患や悪性疾患との鑑別に有用かもしれない.
【結語】
5層構造が保たれた小腸の部分的な壁肥厚を認めた場合,MDも鑑別する必要がある.USはMDの質的診断に有用であるが,描出するには反復や注腸,十分な圧迫などの工夫が必要である.メッケルシンチが陰性でも,臨床的にMDが疑われる時はUSを粘り強く行う必要がある.