Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管

(S410)

スクリーニングの腹部超音波検査にて指摘された腸管壁の肥厚と肝硬変

Intestinal wall thickness pointed out by screening abdominal ultrasonography and liver cirrhosis

七條 智聖1, 糸林 詠1, 志村 謙次1, 崎山 恵里子2, 布施 義也2, 木内 清恵2, 菅澤 千賀子2, 伊東 功江2, 朝田 寛2, 関根 智紀2

Satoki SHICHIJO1, Ei ITOBAYASHI1, Kenji SHIMURA1, Eriko SAKIYAMA2, Yoshiya FUSE2, Kiyo KIUCHI2, Chikako SUGASAWA2, Yoshie ITO2, Yutaka ASADA2, Tomoki SEKINE2

1国保旭中央病院消化器内科, 2国保旭中央病院中央検査科

1Department of Gastroenterology, Asahi General Hospital, 2Department of Laboratory, Asahi General Hospital

キーワード :

【目的】
腹部超音波検査を施行した際に,腹部症状を有しない場合でも腸管壁肥厚を指摘されることがある.癌などの器質的疾患による場合もあるが,原因がはっきりしないことも多い.その中でも,肝硬変を有する症例が一定数あり,今回はその症例における検討を行った.
【方法】
2007年10月から2009年12月までに当院にて腹部超音波検査を施行された延べ50685例を対象とした.「腸壁肥厚」を有する症例は延べ344例あり,そのうち,癌や潰瘍,各種腸炎と診断された症例および,発熱や腹痛のために腸炎が疑われた症例を除くと30例が残った.30例のうち9例で肝硬変の所見が認められた(残りの21例のうち13例で腎障害が認められた).50685例のうち,「肝硬変」の画像所見が認められたのは延べ1256例(男性818例,女性438例,平均年齢67.4±10.5歳)であった.
【結果】
9例はすべて男性であり,平均年齢は63.4±15.7歳であった.C型肝硬変が5例,アルコール性肝硬変が4例であった.血清Alb値は1.7-4.5(2.9±1.0)g/dl,Cr値は0.6-1.4(0.98±0.26)mg/dl,Child-Pugh scoreは5-11(7.7±2.4)点であった.6例で脾腫が,上部消化管内視鏡を施行された7例中4例に静脈瘤が認められ,門脈圧亢進症との関連が考えられた.腸管壁肥厚の部位は3例が右側小腸,4例が右側結腸,1例が左側結腸,1例で全結腸に認められた.後日に再度,腹部超音波検査を施行された8例のうち,6例で腸管壁肥厚が認められなくなっていた.CTを施行された6例のうち,腸管壁肥厚が確認されたのは1例のみであり,その1例だけは腹部超音波検査とCTが同日に施行されており,残りの5例は両検査の間隔がそれぞれ3, 7, 13, 19, 40日間であった.胆嚢壁の評価が可能であった7例のうち,4例で胆嚢壁の肥厚が認められたが,再検した際に4例とも胆嚢壁の肥厚が認められたのに対し,腸管壁の肥厚が認められたのは1例だけであった.
【考察・結論】
肝硬変を有する症例において腸管の壁肥厚が見られる原因としては,低栄養による浮腫や門脈圧亢進症が考えられている.また,肝硬変を有する症例では,bacterial translocationの要因と考えられている腸管透過性の亢進を来たすこと,腸管粘膜の生検検体において浮腫や壁肥厚が認められることが知られている.今回我々の検討した症例において,右側小腸・右側結腸の壁肥厚例が多いことは門脈圧の亢進が壁肥厚に関与していることを示唆する.すなわち,上腸間膜静脈は下腸間脈静脈に比して解剖学的構造上,側副血行路が形成されにくいために,圧が亢進しやすいことによる.胆嚢壁肥厚は低栄養などによるものと考えられるが,再検査にて胆嚢壁肥厚は再現性があったものの,腸管壁肥厚は一過性の例が多かった.また,9例がすべて男性であることに関して,さらなる検討が望まれる.