Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例

(S409)

腹腔内出血を生じた肉腫様肝癌の一例

A case report of sarcomatoidhepatocellar carcinoma with intraperitoneal bleeding

藤澤 真理子1, 小川 眞広1, 松本 直樹1, 塩澤 克彦1, 阿部 真久1, 廣井 喜一1, 田中 直英1, 森山 光彦1, 絹川 典子2, 杉谷 雅彦2

Mariko FUJISAWA1, Masahiro OGAWA1, Naoki MATSUMOTO1, Katsuhiko SHIOZAWA1, Masahisa ABE1, Yoshikazu HIROI1, Naohide TANAKA1, Mitsuhiko MORIYAMA1, Noriko KINUKAWA2, Masahiko SUGITANI2

1駿河台日本大学病院内科, 2日本大学医学部病理部

1Department of Internal Medecine, Surugadai Nihon University Hospital, Tokyo, Japan, 2Department of Pathology, Nihon University School of Medicine, Tokyo, Japan

キーワード :

80歳,女性.10年前,肝嚢胞ドレナージを施行後,当院で定期的に画像検査を行っていた.突然の右季肋部痛が出現し,近医受診して鎮痛薬を処方され,症状軽快した.3日後,当院受診し,腹部超音波検査で肝腫瘍,腹水を認められ,また貧血も見られたことから入院となった.第6病日,突然の上腹部痛を訴え,腹部超音波検査を再度施行したところ,腹水が増加していた.試験穿刺では血性腹水であり,引き続き造影超音波検査を施行した.肝右葉には5cm大の腫瘍が3個認められ,S6の腫瘍は入院時よりも増大していた.造影剤注入後,腫瘍はそれぞれ濃染を示し,また肝表面より腹水中に造影剤の漏出が認められた.肝腫瘍破裂の診断で緊急肝動脈塞栓術を施行した.その後止血が得られたが,成人呼吸窮迫症候群を発症し,第57病日,死亡退院となった.病理解剖の結果,肝右葉と横隔膜,腸間膜,大網の著明な腫瘍性癒着と,腹膜播種多数が認められた.顕微鏡所見では広範な壊死を認めた他,紡錐形の腫瘍細胞で多くが占められ,一部肝細胞が見られたことから肉腫様肝癌の診断となった.
【考察】
肉腫様肝癌の頻度は肝癌剖検例の3.9%で,肝細胞癌が肝動脈塞栓術や肝動注後の反復により変化したものが多いとされている.また早期より遠隔転移,リンパ節転移を起こし,極めて予後不良である.本症例では長期間の経過観察で背景肝に障害無く,肝炎ウイルス感染も無く,肉腫様変化を来たす前の肝細胞癌の存在は確認できなかった.しかし5ヶ月前に撮影したMRI画像を後ろ向きに検討すると,肝S6に不整形な腫瘍が描出されており,今回の病変の初期像とも考えられた.このときを発症とすると,約7ヶ月で死亡しており,増大速度が速く,高悪性度で肉腫様肝癌の経過として矛盾は無いと思われた.ソナゾイドによる造影超音波検査で質的診断には至らなかったが,腹腔内出血の診断に有用で,止血術が成功した.肉腫様肝癌の破裂は検索し得た限り報告が無く,今回,報告する.