Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管

(S409)

小腸蠕動異常を計測する

Measurement of small intestine peristalsis in infection bowel disease

豊留 幸子1, 利川 香織1, 杉山 育代1, 冨田 周介2

Sachiko TOYODOME1, Kaori TOSHIKAWA1, Ikuyo SUGIYAMA1, Shuusuke TOMITA2

1冨田クリニック臨床検査科, 2冨田クリニック消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, Tomita clinic, 2Department of Gastroenterology, Tomita clinic

キーワード :

【背景】
普段我々はUS施行時,腸管の全体的な内容物の流れと収縮回数を見て小腸蠕動亢進・正常・低下を主観的にとらえている.今回,我々が主観的にとらえているこれらの蠕動を数値化するとどうなるのか?.そこでUS施行時,急性腸炎・正常食後・正常空腹時における各々の蠕動亢進・正常・低下例について分類し,retrospectiveに腸管流速と腸管収縮速度を計測する事で小腸蠕動を数値化し客観視する事を試みた.
【目的】
急性腸炎,正常食後及び正常空腹時の腸管流速と腸管収縮速度を計測する.
【対象】
急性腸炎439例,正常食後410例,正常空腹時366例.対象の分類方法は臨床症状として下痢や腹痛を伴いUSにて液状成分による腸管拡張像などの急性腸炎像を呈しているものを急性腸炎例に分類.臨床症状として腸炎を除外でき食後の経過時間とUSにおける胃の残渣による拡張の程度を総合的に判断し正常食後例と正常空腹時例とに分類した.なお対象を急性腸炎・正常食後・正常空腹時とに分類したのは,上記のように腸管の状態が違ってもUSにおいて我々が主観的にとらえている蠕動亢進・正常・低下の速度に差が生じていない事を確認する為である.
【装置】
東芝社製SSA-660A Xario周波数3.5,6.0,8.0MHz
【方法】
腸管流速の求め方:内容物が直線状に流れたその距離を定規を用いて画面上で計測し,それを時間即ちコマ数/フレーム数で割った.腸管収縮速度の求め方:横断像において蠕動により動く最大外径から最小外径までの距離を,その間の時間即ちコマ数/フレーム数で割った.
【結果】
急性腸炎:腸管流速(①蠕動亢進6.9±4.5cm/s(n:125)②蠕動正常3.8±0.8cm/s(n:66)③蠕動低下0.3±0.2cm/s(n:55)) 腸管収縮速度(①2.7±1.5cm/s(n:78)②1.9±0.7cm/s(n:61)③0.3±0.1cm/s(n:54)).正常食後:腸管流速(①8.0±5.1cm/s(n:64)②4.9±3.0cm/s(n:136)③0.6±0.4cm/s(n:7)) 腸管収縮速度(①3.4±1.2cm/s(n:63)②2.4±1.1cm/s(n:133)③0.4±0.2cm/s(n:7)).正常空腹時:腸管流速(①7.9±3.0cm/s(n:20)②4.4±2.4cm/s(n:137)③0.5±0.2cm/s(n:27)) 腸管収縮速度(①3.3±1.4cm/s(n:21)②2.3±1.0cm/s(n:134)③0.4±0.2cm/s(n:27))
【考察】
今まで主観的にとらえていた小腸蠕動亢進・正常・低下は数値化すると差がみられた.また急性腸炎・正常食後・正常空腹時と腸管の状態が違っても小腸蠕動亢進・正常・低下における速度はあまり変わらなかった.以上より我々が蠕動亢進・正常・低下とみなしたものを実際に計測し数値化すると各々に違いが表れた.また当院のUS施行時における小腸蠕動運動のとらえ方は腸管の全体的な内容物の流れを観察し,腸管の収縮回数について4〜5秒/回を蠕動正常とし,それより少なければ蠕動低下,多ければ蠕動亢進としている.今回,腸管流速と腸管収縮速度の計測により小腸蠕動を数値化したことで,普段我々がとらえているこれらの小腸蠕動亢進・正常・低下のとらえ方に意義があると理解できた.補足として測定の際の内容物のとらえ方は腸管の状態により異なり,急性腸炎は液状成分による腸管の拡張により腸管内腔径が広く内容物はとらえやすい.正常食後は腸炎ほどではないが残渣と水分による腸管の拡張が見られ内容物はとらえやすい.正常空腹時は腸管内に残渣や水分が少ないので腸管内腔径が狭く内容物はとらえにくいが,空腹時に飲料水を多量に飲んでいれば腸管内腔径は広く内容物はとらえやすかった.
【結語】
腸管蠕動異常という曖昧な事項を数値化し客観視を試み,その結果を報告した.