Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例

(S408)

ソナゾイド造影超音波検査が診断に有用であった小型肝内胆管癌の一例

A case of small Intrahepatic Cholangiocarcinoma diagnosed by Sonazoid enhanced ultrasonography

谷口 涼子1, 清水 愛1, 溝上 恭代1, 細井 亮二1, 寺道 恭子1, 神田 典尚1, 寺西 康1, 木原 一2, 松田 康雄2

Ryoko TANIGUCHI1, Ai SHIMIZU1, Yasuyo MIZOKAMI1, Ryoji HOSOI1, Kyoko TERAMICHI1, Norihisa KANNDA1, Yasushi TERANISHI1, Hajime KIHARA2, Yasuo MATSUDA2

1八尾徳洲会総合病院中央検査室, 2八尾徳洲会総合病院肝胆道外科

1Department of Clinical Laboratory, Yao Tokushukai General Hospital, 2Department of Hepatobiliary Surgery, Yao Tokushukai General Hospital

キーワード :

【症例】
82歳,男性
【現病歴】
C型慢性肝炎にて経過観察中,腹部超音波検査にて肝左葉に低エコー域を認め精査となる.
【血液検査】
腫瘍マーカーはCA19-9 52.3U/mlと軽度上昇.AFP<10.0ng/ml,PIVKA-Ⅱ25mAU/mlと正常範囲内であった.血液生化学検査は軽度の貧血を認める他異常を認めなかった.
【US所見】
肝S3肝表面よりに1.1cm大の境界不明瞭な低エコー域を認めた.内部を脈管構造が貫通していた.カラードプラでは中心部に豊富な動脈性のシグナルを認めた.
【造影US所見】
早期血管相では動脈(A3)が腫瘍を突き抜けていた.腫瘍は辺縁が強く染まり,リング状となった.また腫瘍の末梢肝実質が強く染まった.MFIでは車軸状にみえる.後期相ではシグナル欠損を呈した.脈管が腫瘍を貫くことと造影パターンより肝内胆管癌を疑った.
【造影CT所見】
動脈相で肝S3末端に淡いリング状の結節影を認めた.後期相では明らかなシグナル欠損は認めなかった.
【EOB造影MRI所見】
肝S3末端にリング状に濃染される結節影を認めた.肝細胞造影相では低信号域として認められた.
【腹部血管造影所見】
腫瘍濃染像は認められなかった.
【手術所見】
肝左葉外側区域の表面に軽度の陥凹を認めた.術中エコーでは腫瘍は境界不明瞭な低エコー像として描出され,内部を脈管構造が貫通していた.カラードプラでは腫瘍を貫く動脈が明瞭であった.造影エコーは早期血管相で動脈(A3分枝)が腫瘍を貫き,腫瘍はリング状に染影された.門脈(P3)は逆流を認めた.後期相では完全なシグナル欠損を呈した.
【病理組織診断】
腫瘍は高分化型の肝内胆管癌で脈管浸潤は伴っていなかった.腫瘍内には明らかな門脈は伴わないが動脈と正常胆管が隣接した構造を認め,グリソン鞘が腫瘍内に取り込まれていると考えられた.
【考察】
肝内胆管癌の造影エコー像は早期血管相で辺縁が強く染影され,リング状を呈する例や全体に均一に染影される例もあり転移性肝癌や肝細胞癌との鑑別に苦慮することがある.肝内胆管癌はグリソン鞘内の胆管から発生し,隣接する門脈は早期に破壊され,動脈は温存されると考えられる.今回,造影エコーにて動脈が腫瘍を貫通する像や腫瘍の造影パターンにより肝内胆管癌を強く疑った.肝内胆管癌,特に小型肝内胆管癌において既存の動脈が腫瘍を貫く像や造影エコーにて腫瘍の末梢肝実質が動脈性に染影される所見が特徴的であると考えられた.