Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例

(S407)

ソナゾイド造影超音波にて経過観察し得た肝炎症性偽腫瘍の1例

A case of Inflammatory Pseudotumor of the Liver that was able to do a follow-up by Sonazoid-enhanced ultrasonography

中村 俊一1, 岡崎 真悟1, 野瀬 弘之1, 大野 竜一1, 東 弘志1, 中井 正人2, 宮下 憲暢2

Shunichi NAKAMURA1, Shingo OKAZAKI1, Hiroyuki NOSE1, Ryuichi OHNO1, Hiroshi AZUMA1, Masato NAKAI2, Kencyo MIYASHITA2

1JA北海道厚生連網走厚生病院医療技術部放射線技術科, 2JA北海道厚生連網走厚生病院内科

1Radiological Technology, Abashiri kosei General Hospital, 2Internal Medicine, Abashiri kosei General Hospital

キーワード :

【症例】
60歳代女性,平成21年1月よりC型慢性肝炎の診断にて,インターフェロンによる抗ウイルス療法治療中であった.平成21年10月のCTにて,肝S5に肝細胞癌(HCC)を疑う早期濃染を認めた.また後日,下腹部痛と血便も認め精査加療目的にて入院となる.既往歴,家族歴に特記事項なし.
【CT所見】
肝S5に動脈早期相にて10mm程度の早期濃染を示す結節を認め,動脈相後期,平衡相とwash outされ,HCCが疑われた.また結腸脾彎曲部から下行結腸壁が浮腫状に肥厚し,周囲脂肪織濃度上昇が認められた.
【EOB造影MRI所見】
肝S5に10mm程度のT1強調像にて淡い低信号,T2強調像にて中心部が周囲肝実質と等信号,辺縁主体に高信号を呈する結節を認めた.Dynamic studyでは辺縁主体に早期濃染を認め,門脈相では濃染が低下,平衡相にて全体が不明瞭化した.肝細胞造影相では結節中心部が低信号化する像を呈した.
【SPIO-MRI所見】
T2強調像にて肝S5に13mm大の腫瘤状高信号を認め,SPIO投与後,腫瘤は肝実質よりも軽度高信号を呈したが,造影前とコントラストに変化を認めなかった.
【US所見】
肝S5に9.4×9.2mmの類円形を呈する等エコー腫瘤を認めた.境界は一部不明瞭,また一部に辺縁低エコー帯を認めた.カラードプラでは血流信号を得られなかった.
【造影US所見】
血管相早期より腫瘤辺縁に同心円状染影を認め,中心部には染影を認めなかった.また血管相後期にて辺縁の同心円状染影は周囲肝実質と同等となるも中心部には染影を認めなかった.約10分後のkupffer相では腫瘤全体が欠損像を呈した.
【経過】
各種画像診断と腫瘤に縮小傾向を認めたことより,肝炎症性偽腫瘍である可能性が強く示唆され,外来経過観察とした.下腹部痛の原因は虚血性大腸炎であった.1ヶ月後の画像所見にて腫瘤径はさらに縮小し,境界は不明瞭となり形態にも変化を認めた.約2ヶ月後の画像所見にて腫瘤はほぼ消失した.
【考察とまとめ】
肝炎症性偽腫瘍は画像診断上,悪性腫瘍との鑑別が困難な場合も多く外科的に切除されることもある.今回,我々は肝腫瘤の経時的変化をソナゾイド造影超音波にて観察し得た.造影CTにても評価は可能であったが,より詳細に腫瘍の大きさや性状を捉えることが出来たのはソナゾイド造影超音波であり有用であった.また造影超音波所見から腫瘤内部の炎症性細胞浸潤や中心部壊死といった肝炎症性偽腫瘍の性状を反映している可能性が示唆された.