Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝細胞癌

(S406)

糖原病Ⅰ型に合併した肝細胞癌症例の超音波画像の検討

Examination of the ultrasonogram to a resection case of the hepatoma in glycogen storage disease type I

杉田 馨里奈1, 小川 眞広1, 塩澤 克彦1, 阿部 真久1, 櫛田 智子1, 森山 光彦1, 碓井 ひろみ2, 和田 美夏2, 麦島 秀雄2, 高山 忠利3

Karina SUGITA1, Masahiro OGAWA1, Katsuhiko SHIOZAWA1, Masahisa ABE1, Tomoko KUSHIDA1, Mitsuhiko MORIYAMA1, Hiromi USUI2, Mika WADA2, Hideo MUGISHIMA2, Tadatoshi TAKAYAMA3

1駿河台日本大学病院内科, 2駿河台日本大学病院小児科, 3日本大学医学部付属板橋病院外科

1Internal medicine, Surugadai Nihon University Hospital, 2Pediatrics, Surugadai Nihon University Hospital, 3Surgery, Nihon University Itabashi Hospital

キーワード :

【目的】
グルコース6-リン酸水解酵素(G6Pase)先天的に欠損する結果多量のグリコーゲンが肝や腎に蓄積する糖原病Ⅰ型は,von Gierke病,肝腎型糖原病とも呼ばれ肝や腎に多量のグリコーゲンが蓄積する疾患である.糖原病は稀な疾患ではあるが近年治療法の改善と共に長期経過観察例も存在するようになった.糖原病は肝細胞内のグリコーゲンの沈着により脂肪肝が認められることも多いが細胞浸潤は少なく線維化も少ないために肝硬変には進展しないといわれている.このような背景肝を持つ成人例に対し超音波検査を行なう場合,肝内の結節性病変に遭遇することも少なくない.肝腺腫が最も多く経過観察となる場合が最も多いものの,肝細胞癌,肝芽腫,限局性結節性過形成などの報告もみられている.今回我々は,糖原病Ⅰ型長期経過観察症例に肝細胞癌の1切除例を経験したので若干の文献的考察を加え報告をする.
【症例】
56歳女.性身長122.5cm,体重38.2Kg.19歳時に当院にくる病で来院,診断時にFanconi症候群を認めていた.超音波検査では,肝両葉の腫大と内部エコーbrightnessの上昇を認めていた.44歳時の超音波検査施行時に肝内に約10mm大の低エコー腫瘤を認めていたが確定診断には至らず経過観察となった.その後約12年後にS8にhalo伴う高エコー腫瘤を認め精査加療目的で入院となった.生化学データはT-bil0.35mg/dL,AST69U/L,ALT44U/L,LDH147U/L,ALP351U/L,TP7.4g/dL,ALB4.1g/dL,BUN38.5mg/dL,Cr2.48mg/dL,Tcho234mg/dL,TG639mg/dL,HDL28mg/dL,LDL118mg/dL,AFP3.1ng/mL,PIVKAⅡ18mAU/mL,精密検査の結果単発の肝細胞癌の診断となり切除が施行された.組織は中分化型の肝細胞癌で非腫瘍部は脂肪化を認めるものの肝硬変の所見は認めなかった.
【まとめ】
今回我々は糖原病Ⅰ型に合併した肝細胞癌の切除症例を経験した.糖原病から発生するがんは背景肝にも肝硬変が無く,また肝腺腫からの発癌もいわれており通常の肝癌症例とは異なることが考えられた.しかしながら若干ではあるものの近年の当原病の長期生存に伴い発癌の報告もされているようになっているため,今後の肝腫瘍性病変の扱いにも注意が必要と考えられた.特に本疾患の症例では,多発する肝内の腫瘍性病変を認めることが多く的確な肝癌の診断が必要でありこの点からも造影超音波検査は重要であると考えられた.今後はこれらの症例に対しても肝癌のハイリスクグループに準じた検査計画も必要と考えられ成人例では外来治療においても肝癌合併を念頭に入れた治療計画が重要になると考えられた.