Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例

(S406)

肝性脳症の発現に一致して希有な血流動態が造影超音波で観察された重症肝障害の2例

Case report: Two patients with fulminant liver failure showing very interesting hemodynamics within the liver parenchyma.

金川 武徳1, 高山 竜司1, 和久井 紀貴1, 藤田 泰子1, 塩沢 一恵1, 渡辺 学1, 中島 早苗1, 飯田 和成1, 丸山 憲一2, 住野 泰清1

Taketoku KANEKAWA1, Ryuuji TAKAYAMA1, Noritaka WAKUI1, Yasuko FUJITA1, Kazue SHIOZAWA1, Manabu WATANABE1, Sanae NAKAJIMA1, Kazunari IIDA1, Ken-Ichi MARUYAMA2, Yasukiyo SUMINO1

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査室

1Dpt. of GI & Liver, Toho University Ohmori Medical Center, 2US Labo., Toho University Ohmori Medical Center

キーワード :

我々は倫理委員会承認のもと,患者の同意を得て各種びまん性肝疾患の肝実質血流をソナゾイド造影超音波で検討しているが,今回,極めて興味深い肝実質血流動態の経時的変化を示した劇症肝不全の2例を経験したので報告する.
【症例1】
23歳の男性.18歳から連日5合以上の日本酒を飲む大酒家.入院1カ月前から焼酎を連日1升飲むようになり,1週前から全身倦怠感,1日前に38℃の発熱出現し,AST/ALT=14420 / 3960であったため入院.第2病日にはアンモニア208,Ⅲ度の脳症出現.第3病日,CEUS,CTで肝実質血流の著明な低下が確認されたが,その後約1週の経過で急速に改善し,同時にトランスアミナーゼ,肝機能ともに回復した.
【症例2】
30歳の男性.全身倦怠感,食思不振強を主訴に近医受診し,肝炎の診断で入院.肝機能低下著明なため10日後に当院へ転送された.入院時のCEUSでは肝実質血流は著明な動脈化を呈していたが,第7病日,動脈化は一気に改善し,perfusionは著明に低下.その翌日,急に脳症が出現し,約1週間で改善.覚醒直後のCEUSでは,実質血流は再び動脈化を呈し,perfusionももどっていた.
【考案】
臨床所見について:重症肝障害で意識障害もきたしたため,両症例ともに診断は十分に基準を満たした劇症肝炎である.劇症肝炎の意識障害は肝機能低下とともに急激に発症することもあるので特に矛盾はないが,問題は覚醒過程である.肝補助療法の如何にもよるが,一般に経験されるのは,肝再生機能回復に従い動揺しながら徐々に覚醒へと向かう.ところが両症例ともに,およそ1週間の意識障害の後,急激に覚醒しており,肝再生に準じた覚醒とは異なると思われる.造影超音波所見について:アルコール性肝炎,B型急性肝炎ともに急性期の肝実質血流は動脈化し,perfusionは動脈枝から直接かつ急速にもたらされる.ところが両例ともに意識障害の発現時期に一致して,腎は普通に染影されるにもかかわらず肝の染影は遅延しかつ,perfusionは極端に低下していた.そして覚醒の時期に一致して,血流は一気に早まり,perfusionの動脈化も明らかとなった.以上から,両症例の肝不全および脳症は,肝の血流障害により惹起された可能性が考えられる.このような症例は2009年度に経験した重症急性肝炎12例中の2例であり,高頻度とは言えないが,劇症肝炎の治療戦略および予後を考える際に,ぜひ把握しておくべき重要な事象と考える.なお多臓器障害をきたしやすい劇症肝炎において本所見を捉えるには,CEUSが最も適する.