Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝細胞癌

(S404)

早期肝細胞癌のBモード画像の検討

Ultrasonographical findings of early hepatocellular carcinoma

窪田 幸一1, 宇賀神 陽子1, 伝法 秀幸1, 斎藤 聡2, 竹内 和男3

Kouichi KUBOTA1, Youko UGAJIN1, Hideyuki DENPO1, Satoshi SAITOH2, Kazuo TAKEUCHI3

1虎の門病院分院臨床検査部, 2虎の門病院肝臓センター, 3虎の門病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital Kajigaya, 2Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 3Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
近年,超音波診断装置の進歩により,肝内小病変の描出能が向上している.肝細胞癌のスクリーニングには,超音波検査が主体であり,高分化型肝細胞癌検出の重要性が増している.一方,肝癌取り扱い規約によると,早期肝細胞癌は高分化型肝細胞癌のうち肉眼的には小結節境界不明瞭型,組織学的には結節内に門脈域の成分が残存する特徴をもつとされる.このため,ソナゾイド造影エコーによる血流およびクッパー細胞機能診断には限界がある.一方,Gd-EOB-DTPA造影MRIは高分化型肝細胞癌の検出が飛躍的に向上した.今回,早期肝細胞癌のBモード画像の所見に関して,典型的な肝細胞癌の所見と比較検討を行った.
【対象と方法】
対象は肝切除で病理学的に早期肝細胞癌と診断もしくは腫瘍生検で高分化型肝細胞癌と診断かつ,CTAPにて結節内の門脈血流が確認された28症例28結節.男性17例,女性11例.年齢は56〜83歳.基礎肝疾患は肝硬変16例(57%),慢性肝炎12例(43%),全例HCV抗体陽性であった.他部位に典型的な肝細胞癌を12例(43%)に合併.Bモードによる典型的な肝細胞癌の所見と腫瘍径とエコーパターンに関して比較検討した.全例,Gd-EOB-ETPA造影MRIの肝細胞相では低信号結節として描出.
【結果】
28例中1例はBモードで病変を指摘することが出来なかった.腫瘍径は6〜20mm(中央値13mm)で,10mm以下が7例(25%),11mmから15mmが13例(46%),16mm以上が7例(25%).腫瘤のエコーレベルは高エコー6例(21%),低エコー19例(75%)であり,内部均一が96%.境界は明瞭が12例(42%),不明瞭が15例(54%).辺縁低エコー帯なし,モザイクパターンなし,nodule in nodule所見なし,lateral shadowなし,後方エコーの増強は9例(32%).bight loopエコーは1例(4%).組織学的な所見との対比では脂肪化がみられたのは8例で高エコーが5例,低エコーが3例であり,各エコーパターンのそれぞれ83%,16%を占め,高エコーは脂肪化が有意に高頻度であった.
【考察】
早期肝細胞癌では典型的な肝細胞癌の所見はほとんど認められず,被膜や隔壁形成のないことが一因と考えられた.一方,脂肪化が高エコーを細胞密度の増加が低エコーを反映した所見と考えられた.肉眼的には境界不明瞭型であるにも関わらず,約半数が境界明瞭に描出された.肝細胞癌の経過は多段階発癌説が考えられて,直径10〜15mmの早期肝細胞癌内により分化度の低い肝細胞癌が出現し,nodule in nodule形態をとると考えられる.動脈血流の増加のない早期肝細胞癌に比べ動脈血流が豊富な肝細胞癌は増大速度が速く,置き換えられ,腫瘍径も急速に増大していくと思われる.直径15mmを超えると高率に脱分化がおこり,特徴的な肝細胞癌所見が現れると考えられる.特異的なBモード所見に乏しい早期肝細胞癌の検出には直径10mm前後の結節の検出が一つの目安と考えられる.
【結語】
早期肝細胞癌のBモード所見には典型的な肝細胞癌の特徴的所見が乏しかった.ウィルス性慢性肝疾患を合併し,直径10〜15mm,境界明瞭な結節,後方エコーの増強がみられる結節は早期肝細胞癌である可能性があると思われた.