Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・治療

(S402)

Real-time virtual sonography (RVS)を用いた経皮的ドレナージカテーテル留置

Percutaneous drainage catheter placement with the real-time virtual sonography (RVS) system

作原 祐介1, 阿保 大介1, 長谷川 悠1, 清水 匡2, 白土 博樹1, 寺江 聡1

Yusuke SAKUHARA1, Daisuke ABO1, Yu HASEGAWA1, Tadashi SHIMIZU2, Hiroki SHIRATO1, Satoshi TERAE1

1北海道大学大学院医学研究科放射線医学分野, 2北海道大学大学院保健科学研究院

1Graduate School of Medicine Department of Radiology, Hokkaido University, 2Faculty of Health Sciences, Hokkaido University

キーワード :

【目的】
腹腔内・後腹膜膿瘍/液体貯留に対する画像ガイド下経皮的ドレナージカテーテル留置は,通常はUS画像やCT画像を参照して行われる.USガイド下留置は比較的簡便な手法で,リアルタイム性に優れ,画像の組織間コントラストや解像度が高く,X線被曝がないといった利点があるが,一方でCT画像と比較し客観性が低く,腸管ガスや肺など気体が介在する領域を描出できない,体表から深部にある構造の描出が不良な場合があるなどの欠点がある.対してCT画像は客観性が高く,深部まで明確に描出できるが,CTガイド下留置はUSと比較して手技がやや煩雑,画像の組織間コントラストが低い,X線被曝があるなどのデメリットがある.近年,US画像とCT画像を融合させるReal-time virtual sonography(RVS)が開発された.これはUS画像とCT画像各々の長所を補完し得る技術で,主に悪性肝腫瘍に対するラジオ波焼灼療法(RFA)に対する臨床応用で,USで描出困難な結節もCT再構成画像の補助でUSガイドでの治療を可能にするなど数々の利点が報告されている.我々はRVSを腹腔内・後腹膜膿瘍/液体貯留に対する経皮的ドレナージカテーテル留置術に応用し,その臨床的有用性を検討した.
【対象】
 CT画像で腹腔内・後腹膜膿瘍/液体貯留を認め,発熱や腹痛などの臨床症状,あるいは血液生化学検査結果から,ドレナージカテーテル留置の適応があると判断され,RVSガイド下で経皮的留置を施行された18名の患者(男性10名,女性8名,平均年齢64.6歳(44-75歳)).疾患は胆汁漏11名,肝膿瘍3名,膵液瘻2名,肝周囲膿瘍・穿孔性腹膜炎各1名.
【方法】
1)膿瘍/液体貯留の診断のために撮像されたCT画像データ(1-3mm再構成)をUS機器(EUB-7500:日立メディコ社製)に取り込む.2)USでRVS画像の位置決めを行った後,膿瘍/液体貯留の部位をRVS画像で確認,穿刺経路を決定.3)RVS画像ガイド下で膿瘍/液体貯留をPTCD針で穿刺.X線透視下でセルジンガー法によりドレナージカテーテルを留置.5)留置後CT画像で,適切な部位・経路にカテーテルが留置されていることを確認.6)留置前CT画像と術中US画像で,体表-標的病変間の距離を計測.7)USで描出されず,RVSの再構成CT画像によりその存在を推測し得た構造,およびその構造と周囲臓器との位置関係を,留置前・後CT画像と併せて評価.
【結果】
18名の患者の19病変にRVSガイド下留置術を施行し,全例で標的病変への留置を施行できた.留置前CT画像で計測した体表-標的病変間の平均距離は3.2cm(1.2-8.1cm),穿刺時US画像で計測した体表-標的病変間の平均距離は3.7cm(2.0-7.0cm)だった.US-CT画像の比較では,USで描出できない構造の存在をCT再構成画像から推測できた.心拍動の影響でDopplerによる血管描出ができなかった症例で,CT再構成画像から血管の存在を推測できた.US画像とCT画像の間に位置ずれを生じたが,周囲をスキャンすることでオリエンテーションが可能で,留置術の参照画像としては許容範囲だった.骨盤内穿孔性腹膜炎の1例で尿管の誤穿刺による血尿を生じたが,経過観察で改善した.その他,重篤な合併症は生じなかった.
【結論】
RVS画像は,経皮的ドレナージカテーテル留置の穿刺ガイド画像として有用と思われる.US-CT画像間に位置ずれがあるが許容範囲であり,画像の客観性を高めることで,安全性への寄与や教育用ツール等への応用が期待される.