Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝細胞癌・造影

(S397)

肝細胞癌の造影超音波血流信号と病理組織像の対比

The comparison of Contrast-enhanced US finding and Histopathological findings in Hepatocellular carcinoma

山下 信行1, 堀 史子2, 谷本 博徳1, 相島 慎一3, 西浦 三郎1, 野村 秀幸1

Nobuyuki YAMASHITA1, Fumiko HORI2, Hironori TANIMOTO1, Shinichi AIJIMA3, Saburo NISHIURA1, Hideyuki NOMURA1

1新小倉病院肝臓病センター, 2新小倉病院臨床検査室, 3九州大学大学院医学研究院形態機能病理学

1The center for liver disease, Shin-Kokura Hospital, 2Clinical Laboratory, Shin-Kokura Hospital, 3Department of Anatomic Pathology, Pathological Sciences, Graduate School of Medical sciences, Kyushu University

キーワード :

【目的】
2007年1月に超音波造影剤ソナゾイドTMが発売されて,肝細胞癌結節内部の血流が詳細に観察できるようになった.これまでに造影超音波所見と組織像,とくに組織分化度との関連は多く報告されている.しかし超音波像と切除標本との対比は報告が少なく,十分な検討がなされていないのが現状である.今回われわれは体外式で行なわれた造影超音波像と肝切除標本を比較する機会を得たので報告する.
【対象と方法】
対象は当院で2009年10月以降に肝切除術を受けた肝細胞癌3症例3結節で,サイズはそれぞれ22,35,37㎜であった.いずれの症例も初発例であるが術直前に血管塞栓術かChemolipiodolizationのいずれか,または両方を施行されていた.超音波検査は切除術の前に行なわれた.超音波検査装置は東芝社製Aprio XGで造影剤はソナゾイド0.0075ml/kgを静注した.撮影モードはPSI(Pulse Subtraction Imaging monitor View)で,MI値0.25〜0.3,FR 10〜15HzでVascular相およびPost vascular相の観察を行った.切除標本はなるべく超音波断層像と一致するような割面で標本を作製し,超音波像と比較した.
【結果】
切除した結節は中分化または低分化型肝細胞癌であった.造影超音波では腫瘍内部の再発又は残存部位に一致して,Vascular相で血流信号が観察された.その中の比較的太い血流信号に一致して,病理標本上,グリソン鞘の門脈と胆管が消失した動脈血管が見られ,その近位にも同様の動脈血管が観察された.その形状は不整で,門脈径又はそれ以上のものが存在し,動脈の性状異常を示唆する像とも考えられた.
【考案】
肝細胞癌は悪性度が進行するに伴い,腫瘍内部の血流が変化することは良く知られている.造影超音波検査ではCTまたはMRIよりも詳細な結節内血流信号の評価が可能と考えられる.一般に動脈血優位な肝細胞癌の組織型は中分化あるいは低分化型とされ,造影超音波のVascular相で濃染している部位は同型の肝細胞癌の存在が疑われるが,今回の検討では大部分が一致していた.さらに太い血流信号に一致して動脈が確認される部位も見られ,血流信号は腫瘍内の血管を良く反映していることが示唆された.
【結語】
造影超音波所見から推測される組織像と肝切除標本は良く一致した.しかしながら一致しない点もあり,さらなる検討が必要である.