東浦 晶子¹, 田中 弘教^{1, 2}, 山平 正浩¹, 吉田 昌弘¹, 柴田 陽子¹, 橋本 眞里子¹, 藤元 治朗³, 廣田 誠一⁴, 西口 修平², 飯島 尋子^{1, 2}

Akiko HIGASHIURA¹, Hironori TANAKA^{1, 2}, Masahiro YAMAHIRA¹, Masahiro YOHIDA¹, Yoko SHIBATA¹, Mariko HASHIMOTO¹, Jirou FUJIMOTO³, Seiiti HIROTA⁴, Syuhei NISHIGUCHI², Hiroko IIJIMA^{1, 2}

¹兵庫医科大学病院超音波センター, ²兵庫医科大学病院内科肝胆膵科, ³兵庫医科大学肝胆膵外科, ⁴兵庫医科大学病院病理部

¹Department of Ultrasonography Center, Hyogo College of Medicin, ²Division of Hepatobiliary and Pancreatic Medicine, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicin, ³Devision of Hepatobiliiary and Pancreatic Medicin, Department of External Medicin, Hyogo College of Medicin, ⁴Department of Surgical Patholory, Hyogo College of Medicin

キーワード :

【目的】
肝腫瘍に対する造影超音波造影剤がLevovistからSonasoid使用へと移行するに伴い，造影方法も高音圧から低音圧での観察が主流となった．しかし低音圧でバブル由来の信号と背景肝由来の信号が完全に分離可能な装置は汎用されておらず，Kupffer相での低音圧診断には限界がある．一方SonazoidもLevovistと同様に高音圧でバブルが崩壊した際には強い信号が得られるため，15分以降の再還流がほとんど見られない時相において高音圧で観察すると，HCCと背景肝のKupffer機能の差が鋭敏かつ客観的に比較可能となる．そこでHCCにおいて，SonazoidのKupffer 相の低音圧モード（low MI）及び高音圧モード（high MI）による染影を比較し，肝癌の有用性を検討したので報告する．
【方法】
2009年1月から11月に造影超音波を施行し組織診断または総合画像診断により診断されHCC 80症例99結節を対象とした（平均年齢69.2歳（51-84歳）造影超音波検査は東芝Aplio XGを使用し，B mode画像を観察後，Sonazoid 0.0075ml/kgをbolus投与し，45秒以内の動脈優位相，45秒から3分までの門脈優位相，15分から50分後までのKupffer相をMI＝0.2-0.4の低音圧（low MI）で観察した．Kupffer相についてはlow MI での観察に引き続いて，high MI（音圧100％，MI1.5以上，2fps）でも観察し，腫瘍の染影をlow MIとhigh MIでそれぞれ高輝度，等輝度，染影なしに分類し検討した．また症例数は少ないが組織の得られたdyspalstic nodule（DN）の2例についても検討した．
【結果】
今回検討したHCCのB mode所見は高エコー38結節，等エコー12結節，低エコー36結節，モザイクエコー13結節であった．これらの造影超音波検査の結果は，動脈優位相でhyper vascularとなったものが72結節（72％）で，また門脈優位相ではhypo vascular が55結節（55％）とそれぞれ最も多く認めた．Kupffer相について検討するとlow MIでは等輝度20結節（20.2％），低輝度57結節（57.6％），染影なし22結節（22.2％）であった．low MIで等輝度の20結節をhigh MIで観察すると染影なしが14例（70％）と感度の改善がみられた．low MIで等輝度の20結節のうち，B mode で高エコーであった11結節をhigh MIで観察すると低輝度あるいは染影なしとなったものが8例（73％）とHCCの指摘に有用であった．またDNはいずれもKupffer相のlow MI，high MIいずれも等輝度であった．
【結語】
Kupffer相において低音圧モードのみならず，高音圧モードでの併用は，肝細胞癌をDNよりの抽出に有用であり，さらに高音圧モードで等輝度となる結節あっても，動脈優位相や門脈優位相を詳細に観察することで鑑別可能であり，総合的に判定することが重要であると考えられた．