Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:手法

(S395)

肝内小病変に対する,Freehand Real-time Elastographyの術中適用

Intraoperative Freehand Real-time Elastography for Small Focal Liver Lesions: Visual Palpation for Non-palpable Tumors

井上 陽介, 高橋 道郎, 有田 淳一, 青木 琢, 別宮 好文, 長谷川 潔, 國土 典宏

Yosuke INOUE, Michiro TAKAHASHI, Junichi ARITA, Taku AOKI, Yoshifumi BECK, Kiyoshi HASEGAWA, Norihiro KOKUDO

東京大学医学部附属病院肝胆膵・人工臓器移植外科

Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery Division, Department of Surgery, Tokyo University Hospital

キーワード :

【背景・目的】
近年,超音波検査が従来の単純な画像検査の枠を超えて,「触診」に近い役割を担うようになってきた.その代表的な技術が,Real-time elastography(RTE)である.RTEは表示された超音波領域内の硬さの違いを色の違いとして視覚化する技術である.既に体表臓器や前立腺での臨床応用は進んでいるが腹腔臓器への適用は報告に乏しい.今回我々は,アロカ(株)によって開発された新しいRTE機器(elasticity imaging:EI)を肝臓外科手術中に適用し,その有用性を検討した.
【方法】
EIは空間相関法を用いており,フリーハンド加圧の質を自動評価するfeedback機能を装備している.加圧の方向,歪みの量,横方向のズレ,加圧前後の超音波平面の同一性を自動評価し,validと判定された加圧時のみ,RTE画像作成のプロセスが起動される.これにより計算量を軽減してreal-timeでEI画像を得ることが可能となっている(図).2006年から2008年までに教室で行われた肝切除のうち,36例,56病変に対して,通常のBモード術中超音波検査(IOUS)の後,術中RTEを施行した.得られたRTE画像所見を4パターンに分類し,実際の最終診断に対する感度,特異度を疾患別に評価した.また,IOUSとRTEの悪性病変病変検出率,描出率を比較した.
【結果】
EI-RTEによる弾性画像は,56病変中55病変(98%)から得られた.肝細胞癌(18病変)に対するRTEの感度特異度はそれぞれ83.3%,75.7%,腺癌(26病変)に対する感度特異度は84.6%,86.2%であった.IOUSでは15病変が描出不十分であった(等エコーパターン8病変,境界不明瞭4病変,背景肝の再生結節によるアーチファクト2病変,後方陰影1例).EI-RTEはこれら全ての病変を明瞭なcontrastで描出し,病変の位置,範囲の評価が可能であった.悪性病変検出率は,IOUSで89.1%(45病変中40病変),EI-RTEで95.6%(45病変中43病変)であった.
【結論】
自動フィードバックシステムで加圧判定を行うフリーハンドRTEは,術中適用することでその性能を最大限に発揮し,肝局所小病変に対する「視覚的触診」が可能となる.