阿部 真久¹, 小川 眞広¹, 塩澤 克彦¹, 松本 直樹¹, 廣井 喜一¹, 森山 光彦¹, 加茂 知久², 高山 忠彦², 絹川 典子³, 杉谷 雅彦³

Masahisa ABE¹, Masahiro OGAWA¹, Katsuhiko SHIOZAWA¹, Naoki MATUSUMOTO¹, Yoshikazu HIROI¹, Mitsuhiko MORIYAMA¹, Tomohisa KAMO², Tadahiko TAKAYAMA², Noriko KINUKAWA³, Masahiko SUGITANI³

¹駿河台日本大学病院内科, ²日本大学医学部消化器肝臓外科, ³日本大学医学部病理部

¹Department of Internal Medecine, Surugadai Nihon University Hospital, Tokyo, Japan, ²Department of Digestive Surgery, Nihon University School of Medicine, Tokyo, Japan, ³Department of Pathology, Nihon University School of Medicine, Tokyo, Japan

キーワード :

【目的】
肝細胞癌の超音波診断に用いる代表的な所見としてhaloが挙げられる．haloは辺縁（周辺）低エコー帯といわれ腫瘍がある程度の大きさになると高率に認める所見である．一方転移性肝癌でもしばしば辺縁低エコー帯が見られ，肝細胞癌が薄いのに対し比較的厚い低エコー帯であることが特徴とされるが必ずしもその所見を有しているわけではない．Sonazoidを用いた造影超音波検査でも腫瘍濃染の後にこの領域に造影剤の残存を認める場合があり転移性肝癌ではリング状の濃染像といわれているがvascular imageのみではなくperfusion imageさらにはpost vascular phaseまで残存する症例も存在する．これらの所見は主観的な要素が多くあまりはっきりと定義がされていないのが現状である．今回我々は転移性肝癌の切除症例を術前に超音波検査をする機会を得たのでほぼ同じ大きさの肝細胞癌切除症例とB-mode像，Sonazoidを用いた造影超音波検査，組織学所見について比較検討を行なったので報告する．
【方法】
術前に造影超音波検査を施行した転移性肝癌（大腸癌，乳癌）切除症例3例の肉眼像よりほぼ同じ大きさの肝細胞癌症例を選択しB-mode像，造影超音波検査，腫瘍辺縁および周辺の組織像についての比較検討を行なった．使用装置：GEヘルスケア社製LOGIQ7，E9，使用探触子4C，9L，造影方法：sonazoid0.015ml/kgまたは0.5ml/bodyの急速静注で行い撮影はCPI （Coded phase inversion mode），またはphase inversionのTissue harmonicを用いた．造影剤注入後約1分までをvascularimage のarterial phase，10分以降をpost vascular phaseとし，肝実質と造影剤の残存を比較し欠損像が得られない症例では随時観察時間を延長して行なった．画像はRaw data保存より再出力し，腫瘍に対する造影効果をvascular image，perfusionimage，の濃染像とpost vascular phaseの欠損像を再評価しB-modeと合わせて腫瘍の組織学的所見との比較検討を行なった．
【結果】
腫瘍に薄い辺縁に低エコー帯を認める場合が転移性肝癌でもあることが確認された．組織学的上はっきりとした線維性被膜が存在しない場合でも低エコー帯が存在することが確認された．不整形の腫瘍の場合，腫瘍境界の把握がし難い症例も存在したが，造影超音波検査により腫瘍肉眼形態像と近似した画像を描出することが可能であった．また腫瘍濃染像のパターンは肝細胞癌と転移性肝癌では異なっていた．
【まとめ】
悪性腫瘍で認める低エコー帯は線維性被膜のみで描出されるわけではなく腫瘍による周囲への圧排の状態も関与していると考えられた．また造影超音波検査はB-modeのみの場合より腫瘍の組織学的な特徴も明瞭とするため腫瘍の鑑別診断に非常に有用であると考えられた