Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘍

(S392)

肝血管腫の「ゆらぎ(fluttering signal)」についての検討

Assessment of Fluttering Signal with hemangioma of the liver

柴田 陽子1, 松永 桃子1, 西村 純子1, 山平 正浩1, 吉田 昌弘1, 東浦 晶子1, 橋本 眞里子1, 田中 弘教1, 2, 西口 修平2, 飯島 尋子1, 2

Yoko SHIBATA1, Momoko MATHUNAGA1, Jyunko NISHIMURA1, Masahiro YAMAHIRA1, Masahiro YOSHIDA1, Akiko HIGASHIURA1, Mariko HASHIMOTO1, Hironori TANAKA1, 2, Shuhei NISHIGUCHI2, Hiroko IIJIMA1, 2

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学内科肝胆膵科

1Ultrasound Center, Hyogo College of Medicine, 2Division of Hepatobiliary and Pancreatic Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【背景】
我々は,これまで血管腫の内部エコーパターンが経時的に変化し,ゆらゆらと揺れている様に観察される現象を「ゆらぎ(fluttering signal)」現象として,その診断における有用性を報告してきた.しかしその頻度や,どのような症例でその現象が認めやすいかなどについてなどは明らかでない.
【方法】
各種画像検査にて肝血管腫と診断された116結節98症例(男性41例,女性57例,年齢55±13歳)を対象にした.診断装置は東芝社製Aplio,Xalioを使用し,3.5-5MHzのコンベックスプローブを用いて観察した.「ゆらぎ」の判定は対象病変部下縁にフォーカスを合わせ,病変内部を詳細に観察できる様拡大(画像が最低でも2cm以上になるように)し,呼吸停止下で腫瘍内部を観察して行った.
【結果】
検討した血管腫116結節の大きさは平均23±19mm(5mm〜105mm),腫瘍存在部位は腹壁から平均42±22mm(11mm〜92mm)であった.腫瘍内部エコーのBモードのパターンは,高エコー46結節,低エコー(辺縁高エコー帯を有するものも含む)3結節,不均一エコー(高エコーと低エコーが混在しているもの)36結節であった.「ゆらぎ」の有無により,「ゆらぎ」有群,「ゆらぎ」無群,判定困難群の3群に分類し検討した.「ゆらぎ」有群77結節(66%),「ゆらぎ」無群29結節(25%)判定困難群10結節(9%)であった.判定困難群の存在領域はすべてS2あるいはS3であり,心拍動によるアーチファクトの影響と考えられた.どのような血管腫でゆらぎを認めやすいかを明らかとするため,まず腫瘍サイズについて検討したところ,平均腫瘍径はそれぞれ「ゆらぎ」有群26±21mm(5mm〜105mm),「ゆらぎ」無群16±9mm(6mm〜38mm)と腫瘍サイズの大きいものの方が「ゆらぎ」を有意に指摘しやすった(p=0.023).腹壁からの距離でみると,「ゆらぎ」有群40±21mm(11mm〜90mm),「ゆらぎ」無群49±24mm(12mm〜92mm)と有意差は認めなかったが,体表に近いほど指摘しやすい傾向を認めた(P=0.074).Bモードのパターンについてみると,「ゆらぎ」有群では,高エコー4結節(5%),低エコー31結節(40%),不均一エコー42結節(55%),「ゆらぎ」無群では,「高エコー24結節(83%),低エコー4結節(14%),不均一エコー1結節(3%)であり,高エコーパターンを呈するものではゆらぎを指摘しにくいことが判明した(p<0.001).今回検討した117結節の中でChameleon signあるいはwax and wane signが認められた症例は,54結節(46%)であり,「ゆらぎ」の方が高頻度であった.
【結語】
 「ゆらぎ」現象は,腫瘍径が大きく,腹壁に近い位置にあり,内部エコーが低エコーおよび不均一エコーの腫瘍でよく観察できた.「ゆらぎ」は,心拍動によるアーチファクトを受け判定困難な場合もあるが,Chameleon sign等よりも観察される頻度が高く,短時間に確認可能であるため,診断に有用である.