Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:NASH・脂肪肝

(S390)

脂肪肝における2種類のTissue Harmonic ImagingによるBモード像の再検討

Comparison between Tissue Harmonic Imaging and Diffferential Tissue Harmonic Imaging in Patients with Fatty Liver

宇賀神 陽子1, 窪田 幸一1, 伝法 秀幸1, 斎藤 聡2, 竹内 和男3

Yoko UGAJIN1, Koichi KUBOTA1, Hideyuki DENPO1, Satoshi SAITOH2, Kazuo TAKEUCHI3

1虎の門病院分院臨床検査部, 2虎の門病院肝臓センター, 3虎の門病院消化器科

1Department of clinical laboratry, Tranomon Hospital Kajigaya, 2Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 3Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
超音波検査でとらえられる肝のびまん性変化の中でも最も遭遇する可能性が高い疾患として脂肪肝があげられる.脂肪肝の超音波所見として,1)肝実質のエコーレベルの上昇,2)肝腎コントラストの上昇,3)深部減衰,4)脈管の不明瞭化とされる.しかし,近年,超音波診断装置の発達とともに,penetrationの向上が図られ,脂肪肝の所見に変化がみられる.そこで,今回,脂肪肝のBモード画像に関して,Differential- Tissue Harmonic Imaging (D-THI)とTissue Harmonic Imaging (THI)について比較検討した.
【対象】
当院で腹部超音波検査を実施し,Fundamental超音波装置で脂肪肝と診断された58症例.内訳は男性27例,女31例,平均年齢60.8歳,平均BMI値25.4.HBs抗原陽性,HCV抗体陽性,皮下厚3cm以上,胆摘後症例は除外.
【方法】
使用装置は東芝社製アプリオXVおよびXG,3.5MHzコンベックスプローブを使用.正中縦走査,肋弓下走査,右肋間走査の同一断面をD-THI(周波数5.0MHz,MI値1.5)とTHI(周波数5.0MHz,MI値1.5)モードにて撮影.また,THIはMI値1.5固定で周波数4.0〜6.0MHzに変更,周波数5.0MHz固定でMI値0.8〜1.5に変更し各々撮影した.検討項目は1)肝実質のエコーレベルの上昇,2)肝腎コントラストの上昇,3)深部減衰,4)脈管の不明瞭化.評価は0:なし,1:軽度,2:中等度,3:高度の4段階に分類評価した.また,Focal Fatty spared areaの有無についても検討した.日本超音波医学会認定検査士3名による視覚評価を行った.装置のモニターによるw所見の違いに関しても検討した.
【結果】
1.D-THIとTHIの比較:それぞれ1)肝実質のエコーレベルの上昇100%,100%,2)肝腎コントラストの上昇100%,100%,3)深部減衰21%,38%,4)脈管の不明瞭化11%,15%,で深部減衰のみ両者に差が見られたが,ともに中等度以上の減衰は5%以下であった.2.周波数の違いによる比較:深部減衰のみ差がみられ,周波数6.0MHzでは78%,周波数4.0,5.0MHzではそれぞれ41,38%であった.3.MI値の違いによる比較:明らかな差は認められなかった.4.Focal Fatty spared area:D-THIとTHIの比較:それぞれ72%,64%に認められた.
【まとめ】
D-THIはTHIに比べ,深部減衰の出現所見頻度が低かった.D-THIでは,THIの課題であった縦方向の空間分解能が改善し,深部領域におけるpenetrationの改善効果が得られたため,脂肪肝における深部減衰も減少したと考えられる.装置の進歩により,脂肪肝のBモード所見に変化がみられ,注意が必要である.深部減衰や,脈管不明瞭化所見はとらえにくくなる一方,Focal Fatty spared areaの出現頻度が増加し,脂肪肝の診断の重要な所見の一つになると考えられた.