Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝臓

(S388)

門脈気腫症例の治療方針決定における超音波検査の有用性

Usefulness of ultrasound for therapeutic plan of portal vein gas cases

大堂 雅晴1, 中川 茂樹2, 佐々木 妙子3, 竹内 保統3, 垂水 綾3, 今鷹 貴梨子3, 近藤 明日香3

Masaharu ODO1, Shigeki NAKAGAWA2, Taeko SASAKI3, Yasunori TAKEUCHI3, Aya TARUMI3, Kiriko IMATAKA3, Asuka KONDOH3

1柳川病院外科, 2国立病院機構熊本医療センター外科, 3国立病院機構熊本医療センター検査科

1Surgery, Yanagwa Hospital, 2Surgery, National Hospital Organization Kumamoto Medical Center, 3Laboratory technician, National Hospital Organization Kumamoto Medical Center

キーワード :

【はじめに】
門脈ガス血症(PVG)はこれまで重篤な予後不良な画像所見として判断されることが多かった.最近の救急領域におけるCTの普及,解像度の向上もありPVG症例の発見が増加した.症例数増加とともに救命症例も増加し,門脈ガス血症がかならずしも”緊急手術の適応あるいは予後不良を定義するサイン”とは言えなくなってきた.これまでの門脈ガス血症のほとんどは腸管虚血,イレウスが原因であり,多くの症例が診断時に全身状態不良であり虚血性腸疾患が疑われていても造影検査はリスクが高く単純CTのみで診断されることが多く,開腹手術か保存的治療かを決定するにはいまだ困難であることが多い.PVGは,その症例増加により注目されるようになり,超音波検査(US)でのPVG症例報告も散見されるようになった.今回,治療方針決定にUSが有用であった3症例を経験したので報告する.
【症例1】
90才代,女性.腹痛,嘔吐にて救急搬送された.USにて肝外側区域,後区域の肝実質に気泡と思われる高エコースポットを認めた.肝内門脈径は脱水のため狭小化していた.門脈内部には求肝性のガスの流れが確認された.小腸壁は肥厚を認め蠕動運動不良であった.ソナゾイドを用いた造影検査(CEUS)では肥厚した腸管へ造影剤の流入を認めた.症状の軽減もあり経過観察とした.
【症例2】
90才代,女性.嘔吐,意識レベル低下にて搬送された.USでは外側区域にガスと思われる高エコースポットを認めた.腸管壁肥厚を認め,腹水も確認された.ソナゾイドを用いたCEUSでは全周性に腸間膜側から流入すると思われる造影剤の流れが確認された.経過観察し症状改善した.
【症例3】
77才代,男性.呼吸不全,ショック状態で搬送された.超音波検査では肝外側区域,前区域に高エコースポットを多数認めた.門脈血流内には求肝性のガスの流れが確認された.腸管肥厚を認めた.ソナゾイドを用いたCEUSでは腸管への造影剤の流れが確認された.全身状態不良であり,イレウス管での経過観察となった.経時的USにて肝内,門脈内ガスが消失した.
【結語】
PVGは予後不良な重篤な病態のサインとして考えられていたが,症例の増加により救命症例が増加した.当院においても5年間に34例のPVG症例を経験し生存率76%であった.手術は19例に適応としたが,虚血性腸疾患を診断し手術を行った結果,試験開腹であった症例が3症例認められた.今回のCEUSを採用したPVG症例に対する腸管血流診断はこのような症例を回避するのに有用な検査であると考えられた.