Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:肝臓

(S386)

肋骨の影響による肝下端〜右腎超音波像の歪みに関する検討

Artifactually ill-margined hepato-renal margin

宇野 篤1, 石田 秀明2

Atsushi UNO1, Hideaki ISHIDA2

1秋田県成人病医療センター消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Gastroenterology, Akita Medical Center, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
右上腹部斜走査で肝下端〜右腎を観察する時,わずかに肋骨を含むだけで画像が大きく歪むことは日常経験することである.我々は,この現象に関しコンピューター・シミュレーションを中心に検討し若干の知見を得たので報告する.
【臨床例の検討(対象と方法)】
上記の断面で得られた像の歪のパターンを20例の像を基に検討した.使用診断装置:東芝社製Aplio XG(中心周波数:3 - 4 MHz).
【臨床例の検討(結果)】
全例で,肝下端の深部と右腎上極にかけてその輪郭が波打つように歪んだ.その歪出現箇所は画像腹側から背側にかけて次第に広がった.
【基礎的検討(方法)】
肋骨,肝,右腎と近傍の超音波伝搬経路を計算し,超音波ビームの軌跡を表示し検討した.なお音速は肋骨 1700 m/s,肝 1540 m/s,腎臓 1570 m/sと仮定した.
【基礎的検討(結果)】
1)プローブ,肋骨,肝,右腎の相互の距離・位置の変化に伴い,右腎(主に上極)に特徴的な偏位(像の歪み)が様々な程度にみられた.2)像の歪みは主として「二重表示」,「断裂像」,「notch (くびれ)像」に分類された.3)プローブと肋骨の距離が近いほど,これらの歪みは大きい傾向があった.4)肝下端の画面水平軸に対する角度が増すほど,歪みは増大傾向にあった.
【まとめ・考察】
今回の検討の発端となったのは,日常検査で右上腹部斜走査で肝から右腎近傍を観察している時,それまで極めて鮮明に表示されていた臓器の輪郭が突然波打つ様に歪む,という現象であり,そのとき画像の手前に肋骨をわずかに含んでいるものの,これがそれ程の大きな歪みを生じえるか検証する価値がある,と考えたからであった.コンピューター・シミュレーションの結果と臨床像の結果はよく符合し,1)わずかに肋骨が入り込むだけで,2)背側に広がる歪領域が生じ,3)この領域が位置的に,肝下端〜右腎上極に相当する,という結果になった.屈折による画像の歪みはこれまでも多く報告されてきたが,未検討のものも多いと思われる.今後これらの検討を個々に行いそのパターンを認識していくことで超音波診断の精度が向上すると期待される.