Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
消化器:線維化診断

(S385)

肝腫慢性肝疾患の線維化診断における肝生検組織所見とVTTQ法の乖離例の検討

Study of the discrepancy between liver fibrosis stage and Virtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)

吉田 昌弘1, 田中 弘教1, 2, 吉本 直喜1, 會澤 信弘2, 齋藤 正紀2, 西上 隆之3, 辻村 亨3, 廣田 誠ー4, 西口 修平2, 飯島 尋子1, 2

Masahiro YOSHIDA1, Hironori TANAKA1, 2, Naoki YOSHIMOTO1, Nobuhiro AIZAWA2, Masaki SAITO2, Takayuki NISHIGAMI3, Toru TUJIMURA3, Seiichi HIROTA4, Shuhei NISHIGUCHI2, Hiroko IIJIMA1, 2

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学内科・肝胆膵科, 3兵庫医科大学病理学, 4兵庫医科大学病院病理部

1Depertment of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine,Hyogo,Japan, 2Depertment of Internal Medicine, Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan, 3Depertment of Molecular Pathology, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan, 4Depertment of Surgical Pathology, Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan

キーワード :

【目的】
我々はこれまでARFI (Acoustic Radiation Force Impulse)により肝硬度を定量的に測定するVirtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)法の肝線維化進展度診断における有用性を報告してきた.しかし,実際には組織所見と測定値に乖離を認めることがある.そこで今回,各線維化グレード毎にどの程度の測定値が想定されるのかを検討するとともに,想定値より乖離した症例の要因についても検討した.
【方法】
2008年10月から2009年12月までの間に当科でVTTQ法を施行した健常人10名,組織所見と対比できた慢性肝疾患症例276例(C型154例,B型53例,B+C型10例,NBNC型59例,男性119例,女性157例,平均年齢55歳)を対象とした.超音波診断装置はARFIを搭載した持田シーメンス社のACUSON S2000を使用した.測定は右肋間で肝表より約1-2cmにROIを設定し,肝硬度を反映するせん断性波速度(Vs値;m/sec)を3〜5回測定,その平均値を求めて測定結果とした.これらの測定値を肝線維化ステージ別の分布を検討し,4分位点よりそれぞれの想定値を求めた.さらにこれを外れた103例については,“想定値±0.5”と0.5以上の差を認めた“乖離例”に分類し,乖離例についてはその要因についても検討した.本検討は院内倫理委員会の承諾を得ている.
【結果】
F0:28例,F1:99例,F2:52例,F3:54例,F4:53例のVs値の平均値と標準偏差,4分位点はそれぞれF0:1.22±0.18(1.14-1.31),F1:1.26±0.31(1.07-1.35),F2:1.32±0.24(1.13-1.50),F3:1.69±0.61(1.32-1.85),F4:2.24±0.68(1.73-2.71)であった.これより想定値をF0:1.3以下,F1:1.1-1.4,F2:1.1-1.5,F3:1.3-1.9,F4:1.7以上と設定したところ,ARFI測定値が想定値内であったものは183例(64.0%),想定値±0.5は96例(33.6%),想定値±0.5を超える乖離例は7例(2.4%)であった.乖離例はそれぞれF1:1例,F3:5例,F4:1例に認め,F1からF3にも関わらず,Vs値が想定値+0.5以上と高値を示した乖離例6例を検討すると,肝機能検査および各種画像検査上は肝硬変としても矛盾しないと考えられる症例が1例,PBC症例が1例,ALT100U/I以上の肝機能高値例が1例,原因不明3例であった.一方F4にもかかわらずVs値が1.14と低値を示した乖離例1例には高度の脂肪肝が認められた.
【考察】
ARFI測定に影響を与える因子は,組織の炎症,高度脂肪沈着などが考えられた.また組織診断が針生検による微小組織切片での診断のためのサンプリングエラーの可能性もあり,血液生化学データとも十分に対比して検討する必要がある.