Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:症例3,その他

(S379)

冠動脈エコー法が診断に有用であった虚血性心疾患の1例

A cases of coronary heart disease Diagnosed by transthoracic echo cardiography coronary artery

原田 修1, 吉岡 真愛1, 高橋 登美子1, 前田 祥子1, 黒瀬 実香1, 本多 美奈子1, 斎藤 三江子1, 伊藤 敦彦2, 池ノ内 浩2, 野崎 彰2

Osamu HARADA1, Manami YOSIOKA1, Tomiko TAKAHASI1, Syouko MAEDA1, Mika KUROSE1, Minako HONDA1, Mieko SAITOU1, Nobuhiko ITOU2, Hirosi IKENOUCHI2, Akira NOZAKI2

1関東中央病院臨床検査部, 2関東中央病院循環器内科

1Department of Laboratory, Kanto Central Hospital, 2Department of Cardiology, Kanto Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
当院ではルーチン心エコー検査時に,冠動脈狭窄の検出を目的とした冠動脈血流評価を行っている.今回,冠動脈エコー法が早期診断,治療適応決定に有用であった発作性心房細動に合併した虚血性心疾患の1例を経験したので報告する.
【症例】
70代女性 発作性心房細動にて当院通院中.2009年4月,労作時息切れを自覚したため,ホルター心電図,負荷心筋シンチグラム検査を施行.ホルター心電図では洞調律で異常なく,負荷心筋シンチグラム検査も有意な集積低下を認めなかった.同年6月,心エコー検査施行時(検査時心房細動)の冠動脈血流は左前下行枝近位部約0.7m/s,遠位部約0.3m/sであった.左室駆出率70%と良好で局所壁運動異常を認めず,有意狭窄の存在は考えにくかった.同年7月10日,数日前より早朝に両肩から背中の痛みを自覚したため,救急外来を受診.徒歩にて来院,診察時症状なく,心筋逸脱酵素の上昇を認めず,心電図上(心房細動心拍数80〜120,完全右脚ブロック Ⅴ1〜Ⅴ3陰性T波)虚血性心疾患の所見は明らかでなく頻脈性心房細動による症状が疑われた.7月13日,早朝に同様の症状を数回自覚した為来院,心エコー検査時症状なく,左室駆出率63%であったが,心尖部に収縮低下の出現を認めた.左前下行枝に対し冠動脈血流評価を行ったところ,近位部に約4m/sの血流を認め,遠位部の血流速度は約0.15m/sと血流速度比が著名に増加した部分が確認された.6月施行時の同部位は約0.7m/sの血流速度であり急激に進行した左前下行枝高度狭窄病変が疑われたため,ただちに担当医に報告を行った.心エコー検査の結果から,不安定狭心症が疑われ緊急入院となり,同日カテーテル検査が行われた.冠動脈造影では,左前下行枝近位部に造影遅延を伴う99%狭窄を認め,同部位に対しステント留置術が施行された.術後の心エコー検査では心尖部の収縮が改善し,ステント部の血流速度は0.2m/sと低下,遠位部は0.3m/sと増加した.
【結語】
本症例は,冠動脈エコー法による血流速度測定により,左前下行枝高度狭窄の初期診断に至る事が出来た.また繰り返し冠血流速度を測定することで,短期間に急速に増悪をきたした病変をとらえることが可能であった.本法は簡便かつ有用であり,スクリーニング検査時において積極的に施行することの有用性が示された.