大塚 健紀¹, 鈴木 真事², 吉川 尚男², 石川 陽子³, 土田 貴子³, 大崎 司³, 伊藤 尚志¹, 荒木 直¹, 山本 雅人¹, 杉 薫¹

Takenori OTSUKA¹, Makoto SUZUKI², Hisao YOSHIKAWA², Youko ISHIKAWA³, Takako TSUCHIDA³, Tsukasa OSAKI³, Naoshi ITOU¹, Tadashi ARAKI¹, Msato YAMAMOTO¹, Kaoru SUGI¹

¹せんぽ東京高輪病院循環器内科, ²東邦大学医療センター大橋病院循環器内科, ³東邦大学医療センター大橋病院臨床生理機能検査部

¹Cardiovascular Medcine, Sempo Tokyo Takanawa Hospital, ²Cardiovascular Medicine, Toho University Ohashi Medical Center, ³Clinical Physiology, Toho University Ohashi Medical Center

キーワード :

【目的】
僧帽弁逆流が左室収縮能指標に及ぼす影響を評価すること．
【方法】
対象は中等度以上の僧帽弁逆流を有し，外科的治療の適応と判断された39例（平均年齢：65±13歳）．全例僧帽弁形成術を施行し，その術前後における左室収縮能を，心エコー法による通常の評価方法のほか組織ドプラ法，スペックルトラッキング法を用いて評価した．使用機種はGE横河メデイカルVivid 7，解析ソフトはEchoPAC PCを用いた．スペックルトラッキング法では3方向のstrain についてglobalと各領域別とに分けて検討した．
【結果】
左室駆出率（EF）は，僧帽弁形成術後，有意に低下した（p＜0.01）．組織ドプラ法による僧帽弁輪部最大収縮期速度（S波）も術後，有意に低下した（p＜0.01）．スペックルトラッキング法による検討では，心尖四腔断層像によるGlobal longitudinal strainは術後に有意に低下した（術前：-14.7％ ± 5.7％ ，術後： -8.6％ ± 4.8％ ，p ＜ 0.01）．一方，左室短軸断層像によるcircumferential strainは有意な変化を示さなかったが，global radial strainは術後に有意に低下した（術前: 44.0％ ± 22.2％ ，術後： 28.8％ ± 13.2％ ，p ＜ 0.01）．心筋の局所性変化をradial strainで検討すると，前壁中隔に比し，後側壁領域でより大きな変化を示した（後側壁: 51.9％ ± 29.1％ 術前 vs. 29.1％ ± 26.6％ 術後，p ＝ 0.0076；前壁中隔: 39.4％ ± 26.4％ 術前 vs. 30.1％ ± 18.8％ 術後，p ＝ NS，表）．
【結論】
組織ドプラやスペックルトラッキングを用いて左室収縮能を評価する場合，僧帽弁逆流がその指標に影響を及ぼしている可能性があり，注意が必要である．今回の研究からradial strainはEFに比し，より鋭敏に僧帽弁形成術による左室収縮能の変化をとらえていると考えられた．