Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:末梢血管2

(S376)

下肢深部静脈血栓の急性期超音波像と形態変化

Ultrasound images and morphologic changes of acute deep vein thrombosis in peripheral lower extremities

岡原 千鶴1, 松村 誠2, 三村 優子1, 山本 哲也1, 三原 千博1, 数野 直美1

Chizuru OKAHARA1, Makoto MATUMURA2, Yuuko MIMURA1, Tetuya YAMAMOTO1, Chihiro MIHARA1, Naomi KAZUNO1

1埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, 2埼玉医科大学国際医療センター心臓内科

1Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan, 2Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan

キーワード :

【背景・目的】
下肢深部静脈血栓(DVT)の診断に対する血管エコーの有効性は数多く報告されているが,急性期における血栓像と治療後の形態変化(とくに中枢側血栓)について詳細に検討した報告は極めて少ない.一般に静脈血栓のエコー像は大腿部領域では鮮明であるが,腸骨部や下腿部領域では不鮮明であり,すべての例を含めた検討には問題が多い.そこで本研究では鮮明な超音波像が得られた例のみを対象として急性期における血栓像及び治療後あるいは自然経過における血栓の形態変化について検討した.
【方法】
対象は下肢静脈エコー検査でDVTと診断された257例中,発症時期と症状あるいは症候が明らかで(症候性),急性期に血栓の中枢部が明瞭に描出され,その後1ヶ月以内に再度エコー検査で血栓の形態変化を確認できた11例.男性9例,女性2例,平均年齢は60±17歳(31〜77歳).主な危険因子は悪性腫瘍5例,長期臥床1例,術後1例,膠原病1例.初発症状は下肢疼痛及び腫脹8例,肺動脈血栓塞栓症3例.中枢部における血栓の内部エコーの性状(均一,不均一)と局在性(中心,偏心)から血栓の形態をⅠ型(均一,中心性),Ⅱ型(均一,偏心性),Ⅲ型(不均一)に分類した.また,Ⅰ型では血栓の血管断面に占める割合からⅠa(≧50%)とⅠb(<50%)に分けた.
【結果】
急性期における中枢部の血栓形態はⅠ型(Ia;7例,Ib;2例)が9例と最も多く,Ⅱ型,Ⅲ型は各1例であった.11例中9例では全く血流は検出されなかった(完全閉塞).2週間〜1ヶ月後,11例中8例では血栓の形態に大きな変化は認められなかったが,8例では明らかな血栓の縮小あるいは,血流再開,可動性消失,血管径減少などの変化が確認された.一方,11例中2例では血栓の形態はⅠ型からⅡ,Ⅲ型,1例(肺動脈血栓塞栓症例)ではⅢ型からⅠ型に変化した.
【結語】
DVTの急性期における血栓の多くは内部エコーが均一で中心部にあり,完全閉塞を呈する.治療後1ヶ月では血栓の形態の変化は少ないが,70-80%の例において血栓の退縮あるいはそれに伴う変化が認められる.