井上 のぞみ¹, 三橋 孝之², 織田 寛子¹, 桐原 真梨子¹, 渡部 まき¹, 金子 貫一郎³, 佐藤 雅経³, 白井 利明³, 伊藤 淳³, 重政 朝彦²

Nozomi INOUE¹, Takayuki MITSUHASHI², Hiroko ODA¹, Mariko KIRIHARA¹, Maki WATANABE¹, Kanichirou KANEKO³, Masatsune SATOU³, Toshiaki SHIRAI³, Jyun ITOU³, Tomohiko SHIGEMASA²

¹国際医療福祉大学熱海病院臨床検査部生理機能検査室, ²国際医療福祉大学熱海病院内科, ³国際医療福祉大学熱海病院整形外科

¹Physiological Laboratory, International University of Health and Welfare Atami Hospital, ²Internal Medicine, International University of Health and Welfare Atami Hospital, ³Orthopedic Surgery, International University of Health and Welfare Atami Hospital

キーワード :

【目的】
深部静脈血栓症（DVT）は人工膝関節全置換術（TKA）および人工股関節全置換術（THA）術後の周術期に多く発生し，肺動脈血栓塞栓症合併により，致死的な状態となる可能性もあると考えられ，周術期の最大懸念事項の1つになっている．当院では，DVTの早期診断のため，TKAおよびTHA手術前後に下肢静脈エコーをスクリーニングで行っている．今回，我々は，TKA，THA手術前後の下肢静脈エコーの結果と術前の動脈硬化危険因子の関係を解析し，整形外科周術期DVTの予測因子について検討した．
【方法】
対象は，当院にて人工膝関節全置換術もしくは人工股関節全置換術を施行し，術前後で下肢静脈エコーを施行した57症例．術前の下肢静脈エコーでDVTを指摘された症例は除外した．年齢，性別に加え，動脈硬化危険因子である肥満，高血圧，脂質異常症，糖尿病，喫煙と周術期DVT合併有無につき検討した．
【結果】
全体で13例，23％の患者に術後DVTの合併を認めた．DVT合併群では糖尿病罹患率が有意に高かった（53％ vs. 23％，p＜0.05）．DVT合併と年齢，性別，その他動脈硬化危険因子との間に有意な関連は認めなかった．年齢，性別，冠危険因子による多重ロジスティック回帰分析では，糖尿病は周術期DVT合併の独立した予測因子であった（p＜0.05）．
【結論】
糖尿病はTKAおよびTHA周術期DVT合併と関連があると考えられた．糖尿病を有する患者では，より周術期DVT合併を念頭に置いた管理が必要である可能性が示唆された．