Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:末梢血管2

(S375)

糖尿病における末梢下肢血流の超音波によるモニタリングの有用性

Usefulness of Monitoring by Ultrasound of Peripheral Lower Extremity Blood Flow in Diabetes

菊地 実1, 齋藤 裕志1, 中山 秀隆2, 萬田 直紀2

Minoru KIKUCHI1, Hiroshi SAITOH1, Hidetaka NAKAYAMA2, Naoki MANDA2

1萬田記念病院放射線科, 2萬田記念病院糖尿病センター

1Department of Radiology, Manda Memorial Hospital, 2Diadetes Center, Manda Memorial Hospital

キーワード :

【はじめに】
糖尿病患者の下肢血流障害のおもな原因に閉塞性動脈硬化症(以下ASO)が挙げられ,動脈硬化の進展による動脈壁の高度な石灰化,複数の連続する狭窄部,高血糖による感染の問題などにより外科的治療ができず経過観察する場合も少なくない.経過観察には,簡便で低侵襲かつ繰り返しが可能な検査が適するため,当施設では上肢足関節血圧比(以下ABI)と下肢動脈エコー検査で経過観察を行なっている.経過観察においてABI検査と下肢動脈エコー検査を比べると簡便性はABIの方が優れ前回と比較も容易である.一方,下肢動脈エコー検査は形態観察と血行動態の両方を評価できる利点があるが,前回との比較は血管径,血流速度,血流波形などの比較と分析が必要でABIのように容易ではない.そこで,パルスドプラ法で血流量を計測し前回比較が容易であるか検討したので報告する.
【対象】
6ヶ月以上の期間を経過し,ABI検査および下肢動脈エコー検査で経過観察を行なった7名を対象とした.
【使用機器】
超音波診断装置はGE製LOGIQ7,探触子はリニア型プローブ(6〜9MHz)を使用した.ABI測定は,血圧脈波検査装置オムロンコーリン製FORMを使用した.
【足関節部血流量の計測方法】
足関節部の前脛骨動脈(以下ATA),後脛骨動脈(以下PTA),腓骨動脈(以下PA)でパルスドプラ法により得られた血流波形の逆流血流成分を含めない収縮期血流成分の平均流速の時間積分値(ml/min)を用いた血流量を計測し,ATA,PTA,PAの血流量を合計し足関節部血流量(以下ankle FV)とした.
【検討方法1】
経過観察を行った7名のABI検査とankle FV を比較した.
【検討方法2】
ankle FVが末梢下肢血流を反映しているかABI,足関節血圧,脈圧,ASO群と正常群の比較をした.
【結果】
下肢症状,ABI,足首部血圧および脈圧の推移とankle FVの推移は一致を示し,悪化2名,不変4名,改善1名と判定した.ankle FVとABI(p<0.01,r=0.47 n=135),足関節収縮期血圧(p<0.01,r=0.31 n=136),拡張期血圧(p<0.01,r=0.35 n=136),脈圧(p<0.05,r=0.19 n=136)は正相関を認めた.ASO群と正常群の ankle FVの平均値は,ASO群(87.5±40.8ml/min:mean±SD)は正常群(173.1±61.4ml/min)より有意な低下を認めた.(P=0.001)
【考察】
ABIは簡便な検査で前回比較が容易であるが,糖尿病患者の場合,動脈硬化の進行により高度な動脈壁石灰化の影響でカフ圧迫不良などにより正確な血圧測定ができない場合があり万全ではない.下肢動脈エコー検査も同様に動脈壁石灰化は血管観察に影響するが,石灰化を回避しパルスドプラ法を用いることで血流速度,波形から動態機能を得ることができる.しかし,前回との比較は側副路の発達状況,血流波形の形状分類や血流速度などの変化から総合的に評価するため,ABIのように容易に比較し判定することは難しかった.また,下肢動脈エコー検査は1本の動脈単位の評価であり,総合的な末梢下肢血流の評価をどのように判断するか苦渋する場合がある.しかし,足関節部の各動脈の血流量を合計して評価すると血流量の変化が明確で容易に比較することができた.
【まとめ】
末梢下肢血流のモニタリングには,下肢動脈エコー検査によるankle FV比較が容易であり有用な方法である.