Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:末梢血管1

(S374)

小児起立性調節障害における血管内皮機能の検討

Endothelial dysfunction in pediatric orthostatic disorder

奥村 謙一, 岸 勘太, 森 保彦, 中尾 亮太, 東 佐保子, 田中 英高, 玉井 浩

Kenichi OKUMURA, Kanta KISHI, Yasuhiko MORI, Ryouta NAKAO, Sahoko AZUMA, Hidetaka TANAKA, Hiroshi TAMAI

大阪医科大学小児科

Department of Pediatrics, Osaka Medical College

キーワード :

【はじめに】
起立性調節障害 (orthostatic disorder以下OD)は,起立に伴う循環動態の変化に対する生体の代償的調節機構が何らかの原因で破綻して生じる.この機構には,循環血液量,心拍出量,末梢血管特性,脳循環調節特性,そしてこれらを調節統合する自律神経機能が含まれる.ODはこの機構のいずれかに異常の見られる機能性身体疾患である.今回我々はOD患児における血管内皮機能をflow-mediated dialatation (FMD)を用いて評価したので報告する.
【対象】
OD患児41名(男子16名,女子25名,平均年齢14.0±2.3歳).ODのサブタイプは起立直後性低血圧(INOH)17名,体位性頻脈症候群(POTS)24名.正常小児20名を対象とした(男子 8名,女子 12名,平均年齢 14.8±7.5歳).
【方法】
ALOKA社製α-10を用いて,上腕動脈における血管内皮機能を測定した.測定はflow mediated dilatationを従来の方法に則り施行した(%FMD).血管内皮非依存性の血管機能評価のために,ニトログリセリン(GTN)口腔内投与後の血管径変化を測定した.
【結果】
(1)OD群全体の%FMDは正常群に比べ有意に低下していた(OD群6.7±3.5%,正常群11.3±3.2%,mean±SD,p<0.001).GTNによる血管内皮非依存性の血管拡張は2群間で有意差は認めなかった (OD群21.8±5.5%,正常群23.1±6.5%).(2)ODのサブタイプ別での検討では,INOH群およびPOTS群の%FMDは,正常群と比較して有意に低下していた.(INOH群6.1±3.1%(p<0.001 vs cotrol),POTS群 7.1±3.7%(p=0.001 vs control)).INOH群とPOTS群の2群間では有意差は認めなかった.GTNによる血管内皮非依存性の血管拡張は3群間で有意差を認めなかった (INOH群21.2±5.5%,POTS群22.4±5.5%,正常群23.1±6.5%).(3)OD群および正常群の血管径は,2群間で有意な差は認めなかった(OD群 3.17±0.43mm,正常群2.98±0.51mm).
【考察】
OD患児にける血管内皮機能は,正常対象群と比較して著しく障害されていた.ODにおける末梢血管の機能異常がいくつか報告されてきている.OD患児におけるFMDの低下の臨床的意義はいまだに不明であるが,OD患児の特徴である低い生活活動度(運動により血管内皮機能が改善すると言われている)や脈圧の狭小化などが,本結果に関与している可能性がある.