Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:末梢血管1

(S374)

FMD検査法におけるshear stress定量の必要性

The relationship between shear stress and flow-mediated dilation

末永 弘美, 谷川 久美子, 野村 彩華, 野村 佳代

Hiromi SUENAGA, Kumiko TANIGAWA, Ayaka NOMURA, Kayo NOMURA

山口大学大学院医学系研究科保健学系専攻

Faculty of Health Sciences, Yamaguchi University School of Medicine

キーワード :

【背景と目的】
上腕動脈におけるflow-mediated dilation(FMD)は血管内皮機能評価法として,広く用いられている.血管内皮機能低下は動脈硬化症の初期病変とされているが,FMDの心血管イベントの予測因子としての有用性は,現在のところ明らかとはなっていない.近年,FMDよりもむしろshear stressが心血管イベント危険因子との関連性が高いと報告されるなど,FMD検査におけるshear stressの定量化が注目されている.今回,若年健常者におけるFMD測定値を,shear stressの観点から検討を行った.
【対象と方法】
対象は若年健常女性30名(22±1 歳)とした.FMD測定における駆血条件は,SBP+50 mmHgの圧で,5 minの前腕部駆血とした.13.5 MHzの高周波プローブを搭載した超音波診断装置2台を用いて,FMD測定のために安静時および駆血解除後の血管径変化を右上腕動脈の中枢側で,shear stressの測定のために血流速度の変化を右上腕動脈の抹消側で,それぞれ連続記録した.shear stressの指標として,駆血解除後のpeak flow,peak shear rate(SR: shear rate=velocity/diameter),駆血解除直後からピークまでのpeak flow AUC(area under curve),peak SR AUC,駆血解除直後から30 sec後までのflow AUC(30 s),SR AUC(30 s)を算出した.FMD検査中は駆血部位である右前腕部に赤外線酸素モニター装置を装着し,組織酸化Hb,組織還元Hbの変化を記録した.また,超音波診断装置を用いて,左右総頚動脈の血管弾性率(stiffness parameter: β値)を測定した.FMD検査終了後には,被検者の体重,体脂肪,筋肉量,および前腕部体積の測定を行った.
【結果】
FMDはpeak flow AUCとの間に有意な正の相関関係を認め(y=0.002x+5.167,R=0.504,p=0.005),peak SR AUCとの間にも有意な正の相関関係を認めた(y=0.0004x+5.580,R=0.474,p=0.008).peak SR AUCと体組成(体重,BMI,体脂肪など)との間には相関関係は認めなかった.また,peak SR AUCと右前腕部体積や組織酸化Hb変化との間にも相関関係は認めなかった.総頸動脈のstiffness parameterは,FMDと有意な負の相関関係を認め(y=-0.70x+12,R=-0.43,p=0.04),peak flow AUCにおいても有意な負の相関関係を認めた(y=-245x+3100,R=-0.581,p=0.004).
【結論】
若年健常女性において,FMDはshear stressの大きさを反映しているが,shear stressの大きさは,駆血による虚血の程度やその範囲を直接反映するものではなく,反応性充血により生じるshear stressは,血管機能を反映している可能性が考えられる.従って,血管内皮機能評価においては,FMDのみならずshear stressの定量を含めた複合的評価が必要と考えられる.