Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:頸動脈

(S372)

高コレステロール血症患者におけるエゼチミブの頸動脈弾性特性に対する作用

Effects of Ezetimibe on carotid arterial elastic modulus in patients of hypercholesteremia

山岸 俊夫1, 加藤 真2, 長谷川 英之3, 金井 浩4

Toshio YAMAGISHI1, Makoto KATO2, Hideyuki HASEGAWA3, Hiroshi KANAI4

1東北公済病院内科, 2パナソニック四国エレクトロニクス(株)開発部門, 3東北大学大学院医工学研究科医工学専攻, 4東北大学大学院工学研究科電子工学専攻

1Department of Internal Medicine, Tohoku Kosai Hospital, 2Engineering, Panasonic Shikoku Electronics Co. Ltd., 3Department of Biomedical Engineering, Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 4Department of Electronic Engineering, Graduate School of Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
エゼチミブは,小腸のコレステロールトランスポーター阻害薬であり,高コレステロール血症の患者を対象にした研究において長期投与した場合,頸動脈内膜中膜肥厚(IMT)の進展抑制があることが知られている.今回,以前にスタチンで研究報告したように,エゼチミブのIMTおよび頸動脈壁弾性特性などに対する作用ついて,6か月の短期間での効果を検討した.
【方法】
外来患者16人(平均年齢52.3才)にエゼチミブ15mgを1日1回内服してもらい,生化学データ,脈波伝播速度(baPWV),上腕動脈血管径増加率(%FMD:Flow-Mediated Dilation),内膜中膜肥厚(IMT)および血管弾性特性を6ヶ月間観察した.%FMDは,被験者の上腕動脈において,安静時に対する駆血解除後の血管径増加率を用いた.IMTおよび弾性特性は,頸動脈エコーにて左右の総頸動脈の各2箇所,Bulbを含まない平坦部分について,合計4箇所を計測部位とした.弾性特性の計測には位相差トラッキング法 (Kanai et al. 2003 Circulation)を用い,IMT計測領域にて測定した.また,弾性特性の平均(EincまたはEθ)を求め,4箇所の平均値からmeanIMTとmean Eincをそれぞれ演算した.
【成績】
LDLコレステロール(LDL-C),脈圧,baPWV,%FMD,mean IMT and mean Eincの初期値は,159±36 mg/dL,43±9 mmHg,1369±240 cm/sec,5.0±6.8%,0.67±0.12mm,1305.6±843.0kPaであった.エゼチミブの投与後に,6ヶ月後に脈圧(+2%),baPWV(-4%) and IMT(-6%)と有意な変化はなかった.一方3ヶ月後に,LCL-C(-23%) と Einc (-12%) は有意に減少し,%FMD(+10%)は有意に上昇していた.(p<0.05).またEincと%FMDの変化の有意な相関は認めなかった.また血管弾性特性(Eθ)の成分の増分,減分をヒストグラムで解析したところ,薄い部分では,平滑筋の硬さに相当する成分が増えていたことから,内皮機能の改善が考えられた.
【結論】
エゼチミブは,体表からの超音波による血管弾性特性あるいは%FMDを有意に変化させ,内皮機能の改善を生じうる可能性が示唆された.また頸動脈弾性特性は,エゼチミブの作用をIMTやbaPWVの変化する前の早期に検出できる可能性が示唆された.