Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:頸動脈

(S371)

頸動脈エコーにて椎骨動脈炎を確認した5例の検討

Study of vertebral arteritis in five patients using carotid ultrasonography

濱口 浩敏1, 高坂 仁美2, 沖 都麦2, 福住 典子2, 坂本 雅子2, 今西 孝充2

Hirotoshi HAMAGUCHI1, Hitomi KOUSAKA2, Tsumugi OKI2, Noriko FUKUZUMI2, Masako SAKAMOTO2, Takamitsu IMANISHI2

1神戸大学医学部附属病院神経内科, 2神戸大学医学部附属病院検査部

1Neurology, Kobe University Hospital, 2Clinical Laboratory, Kobe University Hospital

キーワード :

【目的】
椎骨動脈に炎症をきたす病態には,血管炎症候群の中でも,大血管炎である高安動脈炎や側頭動脈炎が考えられる.血管炎により頭蓋内外の動脈閉塞が起こると,脳梗塞を合併することがあるため,迅速な診断加療が必要である.その際,超音波検査は非侵襲的であり,全身血管の評価法として非常に優れている.今回我々は,頸動脈エコー上,椎骨動脈に炎症像を認めた5症例を経験したので報告する.
【対象・方法】
臨床的に血管炎が疑われ,頸動脈エコー上,椎骨動脈に異常が認められた5例について,基礎疾患,エコー所見を合わせて評価した.エコーは7.5MHzのリニアプローブを使用し,椎骨動脈を描出.短軸像,長軸像をそれぞれ観察した.また,同時に総頸動脈の評価を行い,12MHzリニアプローブにて側頭動脈の評価も行った.
【結果】
5例とも女性であった.2例は基礎疾患に側頭動脈炎を認め,2例は高安動脈炎であった.1例は基礎疾患がSLEであったが,他の血管には炎症所見を認めなかった.頸動脈エコーでは3例で椎骨動脈にhalo像を認め,高安動脈炎の2例では狭窄病変を認めた.椎骨動脈障害として認められるような症状(後頸部痛やめまいなど)は高安動脈炎症例でのみ認めた.基礎疾患に対する治療前後で,椎骨動脈エコーを施行できた3症例については,halo signを呈していた2症例は,halo signの改善を認め,血流波形の変化も観察できた.一方,狭窄していた1例については,明らかな改善傾向は認めなかった.
【考察・結論】
今回の検討では,いずれも基礎疾患に血管炎を来す病態が存在した.高安動脈炎は若年で発症し,大動脈のみならず鎖骨下動脈から椎骨動脈に炎症が波及するため,比較的進行してから出現した状態と考えられる.そのため,総頸動脈のマカロニサインと同様,椎骨動脈も内腔側へ炎症が波及し,狭窄に至った可能性がある.一方,側頭動脈炎は中高年に発症し,側頭動脈のみならず,頸動脈,椎骨動脈にも早期に炎症の波及をきたすことがある.初期から炎症像を認めるため,側頭動脈エコーでみられるようなhalo signを椎骨動脈でも呈した可能性が考えられる.また,今回1例でSLEに合併して他部位に症状なく,椎骨動脈にのみ炎症像を認めたのは興味深い結果であった.頸動脈エコー検査は一般に広く用いられる検査であるが,椎骨動脈に炎症所見を確認することができたのは他に報告例なく,非常に興味深い症例と考えられた.今回のように血管炎を疑った症例では,頸動脈エコーで椎骨動脈にも炎症像を確認できることがあるため,詳細に観察することが非常に重要と考える.今後の症例の蓄積が待たれる.