Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:心機能2

(S370)

蛋白尿が左室拡張動態へ与える影響:収縮機能が保たれている症例における検討

An impact of proteinuria on left ventricular diastolic performance in patients with preserved systolic function

今井 道生, 岩倉 克臣, 岡村 篤徳, 小山 靖史, 伊達 基郎, 樋口 義治, 井上 耕一, 木村 竜介, 藤井 謙司

Michio IMAI, Katsuomi IWAKURA, Atsunori OKAMURA, Yasushi KOYAMA, Motoo DATE, Yoshiharu HIGUCHI, Koichi INOUE, Ryusuke KIMURA, Kenshi FUJII

桜橋渡辺病院心臓・血管センター循環器内科

Cardiology, Cardiovascular Center, Sakurabashi-Watanabe Hospital

キーワード :

【背景】
Chronic kidney disease (CKD)は心血管系の新たな危険因子として現在注目されている.持続する蛋白尿はCKDの一要素であり,微小血管不全の一兆候として心血管系事故や心不全の独立した危険因子である.しかしながら,CKDと左室拡張動態との関係については未だ明らかではない.我々は左室収縮能の保たれた症例における左室拡張動態と蛋白尿の存在との関係についての検討を行った.
【方法】
対象は当院で心エコー検査を行った50歳以上かつ左室駆出率(Left ventricular ejection fraction:LVEF)が50%以上の患者連続192症例である.蛋白尿の有無により患者を2群に分類し,患者背景および心エコーにおけるLVEF,左室後壁壁厚(Post wall thickness:PWth),相対壁厚(Relative wall thickness:RWT),および左室弛緩能の指標としての僧帽弁輪移動速度(e’)と左室拡張末期圧の指標としてのE/e’ ratioについて比較検討した.また,腎機能の指標として推定糸球体濾過率(Estimated glomerular filtration rate:eGFR)を日本腎臓学会より推奨されているMDRD簡易式により求めた.
【結果】
蛋白尿群(n=54,28%)においては血清クレアチニン値は有意に高値であり,eGFRは有意に低値であった.心エコー上LVEFには差を認めず,PWth,RWTは蛋白尿群で有意に高値であった.蛋白尿群ではe’は有意に低値であり,E/e’ ratioは有意に高値であった.e’の多変量解析においては性別,E,および蛋白尿が独立した規定因子であった.また,E/e’の多変量解析においては蛋白尿のみが独立した規定因子であった.
【結論】
蛋白尿を認める症例は左室壁厚の肥大傾向を認め,左室拡張能は蛋白尿を認めない症例に比べ有意に低下していた.蛋白尿を認めるCKDの心血管系への影響に左室拡張能が低下し,それが心血管系へのリスクとして関与している可能性が考えられた.