宮内 元樹¹, 鈴木 健吾², 出雲 昌樹², 田端 千里¹, 桜井 正児¹, 辻本 文雄³, 信岡 祐彦³, 三宅 良彦²

Motoki MIYAUCHI¹, Kengo SUZUKI², Masaki IZUMO², Chisato TABATA¹, Masaru SAKURAI¹, Fumio TUJIMOTO³, Sachihiko NOBUOKA³, Fumihiko MIYAKE²

¹聖マリアンナ医科大学病院臨床検査部超音波センター, ²聖マリアンナ医科大学循環器内科, ³聖マリアンナ医科大学病院臨床検査医学講座

¹Department of Laboratory Medicine US center, St. Marianna University School of Medicine, ²Department of Cardiology, St. Marianna University School, ³Department of Laboratory Medicine, St. Marianna University School of Medicine

キーワード :

【目的】
体表面心電図のストレイン型ST-T変化は，心内膜下障害を反映しているといわれている．近年開発された2D speckle tracking法は角度非依存性であり，これまでより正確に左室長軸方向の収縮機能を評価することが可能である．この2D speckle tracking法を応用したTissue mitral annual displacement （TMAD）は左室長軸方向の収縮機能評価を簡便に行うことができると期待されている．今回我々は，高血圧患者における心電図ストレイン型ST-T変化と左室機能の関係について検討を行った．
【方法】
対象は高血圧患者49名（HT群）と年齢，性別をマッチさせた健常者50名（control群）．全例で標準的な計測の他に左房容積係数（LAVI），拡張早期と拡張後期の左室流入血流比（E/A），拡張早期僧帽弁輪部移動速度波形（E’）を評価した．またTMADを弁輪部，心尖部がよく観察できる心尖部四腔像で計測し，QLAB（Philips Medical Systems）でoff line解析を行った．高血圧患者は，標準12誘導心電図にてストレイン型ST-T変化を呈した高血圧患者24人（HTST群）とストレイン型ST-T変化を呈さなかった高血圧患者25人（HTNST）の2群に分けた．
【結果】
左室駆出率は各群で有意差を認めなかった．HT群はcontrol群と比較して拡張機能が低下しており，さらにHTST群はHTNST群と比較して有意に低下していた．（LAVI：36.3 ± 10.2 vs 25.4 ± 11.7，E/A：0.5 ± 0.1 vs 0.8 ± 0.2，E’：5.3 ± 1.9 vs 6.9 ± 1.7 p＜0.05）．また，TMADにおいてもHT群ではcontrol群と比較して低下しており，HTST群はHTNST群と比較して有意に低下していた（7.8± 2.1 vs 13.6 ± 3.1，p＜0.001）．
【結論】
心電図ストレイン型ST-T変化を呈する高血圧患者では拡張機能に加え，長軸方向の収縮機能の低下も示唆された．