Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:心機能2

(S369)

連続の式によるstroke volume indexの定量化の正確性に関する検討

Accuracy of continuity equation for stroke volume index by Doppler assessment

網屋 俊1, 恒成 博1, 東福 勝徳2, 坪内 博仁2

Shun AMIYA1, Hiroshi TSUNENARI1, Katsunori TOFUKU2, Hirohito TSUBOUCHI2

1鹿児島厚生連病院循環器科, 2鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学

1Division of Cardiology, Kagoshima Kouseiren Hospital, 2Department of Digestive and Life-style related disease, Kagoshima University Graduate School

キーワード :

【背景】
僧帽弁閉鎖不全やシャント疾患の定量的評価法として,連続の式を用いる方法が広く行われている.この方法は弁口面積を求める際に誤差が生じやすいことが欠点であり,ある程度の熟練を要する.しかし,その精度は不明であり,測定点も一定の見解はない.本研究の目的は,大動脈弁・肺動脈弁通過血流を算出する際に,弁口面積を複数の測定点で測り,どの部位が最も僧帽弁通過血流量とよく相関するかを検討することである.
【方法と対象】
2009年9月より12月まで,当科でECGが正常で,有意な弁膜症およびシャント疾患がなく,高血圧治療歴や心疾患歴のない健常男性連続47人を対象とした(年齢50.7±15.4yrs,身長168±5cm,体重64.3±8.5kg,BSA1.73±0.12m2).僧帽弁,大動脈弁(左室流出路の収縮中期,弁輪内径,外径),および肺動脈弁(肺動脈収縮中期,拡張末期(短軸像),拡張末期(長軸像))を通過するstroke volume index(SVI,ml/m2)を連続の式で計算し,その平均値および相関を検討した.統計はPaired-t test,相関係数を検討した(Stat MateIII,アトムス).
【結果】
平均SVIは,僧帽弁35.4±9.8,左室流出路収縮中期31.6±6.0(僧帽弁に対するp=0.014),内径28.7±6.7(p<0.0001),外径33.1±7.8(p=0.17),拡張末期34.9±6.2(p=0.71),肺動脈収縮中期26.0±13.6(n=39,p<0.001),拡張末期38.5±17.0(n=43,p=0.25),長軸57.8±21.9(n=43,p<0.001)であった.MRやARの定量によく使われる,僧帽弁通過血流に対する相関係数は,左室流出路中期r=0.26,大動脈弁内径0.21,外径0.22,左室流出路拡張末期が0.31で唯一有意であった(p=0.04)が,それでも弱い相関であった.三分位の最初の16人はr=0.29(p=0.27),次はr=0.28(p=0.29),最後はr=0.44(p=0.09)であった. 僧帽弁と,左室流出路拡張末期のSVIについて,最初の16人と最後の15人を比較しても,相関係数は良好なラーニングカーブを描いたとは言えなかった.今回の研究では一定数トレーニングすれば誤差が少なくなるという結論は導き出せなかった.平均値は有意差がないのに相関は弱いということは,症例毎のばらつきが大きいということが推測される. 僧帽弁通過血流に対する肺動脈の相関は,収縮中期0.82(p<0.001),拡張末期0.41(p<0.01),長軸像0.68(p<0.001)で収縮中期が最も強い相関を示した.平均SVIは有意に小さいが,僧帽弁血流の代用として期待できると思われた.大動脈弁と肺動脈通過血流SVIは,全ての組み合わせで0.55以上の有意な相関を認め,肺動脈収縮中期と左室流出路内径,外径,拡張末期が0.8以上の強い相関を示した.平均値は大動脈弁内径と肺動脈収縮中期,大動脈拡張末期と肺動脈拡張末期が有意差を認めないため,望ましい組み合わせと考えられた.
【結語】
連続の式によるSVI定量評価は,僧帽弁と大動脈弁通過血流で良好な相関を示さず,良好なラーニングカーブを描かなかった.僧帽弁と肺動脈弁収縮中期,大動脈弁と肺動脈弁は良好な相関を示し,代用することも可能と考えられる.