Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:心機能1

(S366)

心室中隔ペーシング後心機能低下,同期不全の出現を認めた4例

RV septal pacing-induced LV dysfunction and dyssynchrony in 4 cases evaluated by echocardiography

正岡 佳子1, 沖本 智和1, 佐々木 洋子2, 土井 裕枝2, 沖野 清美2, 砂押 春香2, 舟木 麻美2, 竹田 亮1

Yoshiko MASAOKA1, Tomokazu OKIMOTO1, Yoko SASAKI2, Hiroe DOI2, Kiyomi OKINO2, Haruka SUNAOSHI2, Asami FUNAKI2, Ryou TAKEDA1

1土谷総合病院循環器内科, 2土谷総合病院心機能検査室

1Department of Cardiology, Tsuchiya General Hospital, 2Cardiovascular Laboratory, Tsuchiya General Hospital

キーワード :

【はじめに】
右室心尖部ペーシングは同期不全を惹起し心機能を悪化させる事が知られている.右室中隔ペーシングは心尖部ペーシングに比べ心機能が保たれると報告され,近年右室中隔ペーシングを選択する症例が増加している.今回我々は右室中隔ペーシング後の心機能低下,同期不全の出現を心エコーにて確認出来た4例を経験したので報告する.
【対象】
2004年6月から2008年12月迄に当院にて右室中隔ペーシングを施行した116例中,心室ペーシング率80%以上の51例のうち術前と術後半年後以降に心エコー検査が施行できた症例は25例であった.7例に術後心機能の低下(-ΔEF≧10%かつEF≦50%)を認め,進行性心筋疾患や冠動脈病変の合併が否定出来ない3例を除外した4例に対し心エコー図にて術前と慢性期で心機能,心臓同期不全の指標の検討を行った.
【症例1】
59歳,男性,拡張相肥大型心筋症.除脈性心房細動に非持続性心室頻拍を合併しICD植え込み術を施行.2年6ヶ月後心不全で入院.心エコー図を再検し心室中隔の壁運動低下を認めた.LVEF術前42%,2ヶ月後37%,2年6ヶ月後30%.QRS術前120ms術後220ms.
【症例2】
75歳,男性,虚血性心疾患でCABGの既往あり.3度房室ブロックでペースメーカー植え込み術を行った.1年2ヶ月後労作時息切れあり心エコー図を再検.心室中隔の壁運動低下を認め,冠動脈造影を再検したが有意狭窄なし.LVEF術前63%,半年後57%,1年2ヶ月後45%,QRS術前140ms,術後170ms.
【症例3】
65歳,男性,高血圧性心臓病.3度房室ブロックでペースメーカー植え込み術を施行.8ヶ月後の心エコー図にて心室中隔基部の壁運動低下を認めた.LVEF術前54%,8ヶ月後38%,QRS術前130ms,術後180ms.
【症例4】
53歳,男性,陳旧性心筋梗塞(下壁).3度房室ブロックで入院し非持続性心室頻拍を有しておりICD植え込み術を施行した.1年後心不全で再入院し心エコー図にて心室中隔,前中隔の広範な壁運動低下を認め,冠動脈造影を行ったが有意狭窄なし.LVEF術前48%,3ヶ月後37%,1年後28%.QRS術前100ms,術後170ms
【2D speckle tracking imaging(2DSTI) radial strainの解析】
4例とも術後心室中隔,前中隔の早期収縮と側壁,後壁の収縮遅延を認め著明な左室内同期不全が出現した.(中隔-側壁最大ストレイン到達時間差心拍数補正値 Case1 18→206ms ,case2 45→259ms,case3 40→280ms,Case4 17→492ms).4例とも中隔,前中隔のstrain値は術後著明に低下した.
【考察】
右室中隔ペーシング後の心機能低下,同期不全の出現を心エコーにて確認出来た4例を経験した.4例とも器質的心疾患を有し,ペーシングリード挿入部周辺の心室中隔の壁運動が最も障害された.2D Speckle Tracking Imaging radial strainの解析にて,心室中隔の早期収縮と側壁のdelayを認め著明な左室内同期不全を伴った.心室中隔ペーシングによる心機能低下症例と考えられ,今後右室至適リード留置部位の同定及び心機能低下予測因子の検討が必要と考えられた.