Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:症例2

(S364)

特異な心エコー図所見を呈したレフレル心内膜炎の1例

A case of Loffler endocarditis with an unusual echocardiographic appearance

金子 明弘, 川合 宏哉, 辻 隆之, 漁 恵子, 山脇 康平, 則定 加津子, 辰巳 和宏, 松本 賢亮, 大西 哲存

Akihiro KANEKO, Hiroya KAWAI, Takayuki TSUJI, Keiko RYOU, Kouhei YAMAWAKI, Kazuko NORISADA, Kazuhiro TATSUMI, Kensuke MATSUMOTO, Tetsuari OONISHI

神戸大学大学院医学研究科循環器内科

Division of Cardiovascular Medicine, Department, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

36歳男性.平成16年(31歳)に視力低下により近医を受診し緑内障と診断された際の血液検査にて好酸球増多を認めたため,専門医療機関に紹介されたが,アレルギー性疾患,造血器腫瘍など好酸球増多を来す疾患が否定され,また好酸球増多に伴う臓器障害も認めず経過観察となった.平成21年7月(36歳),全身倦怠感が出現し,その後歩行障害,失認を生じ,近医を再受診した.血液検査にて著明な好酸球増多を認めたため,当院を紹介され,頭部MRIにて多発性脳梗塞を認め,精査加療目的にて入院となった.入院時血液検査にて白血球増加26500/μl,好酸球増加17822/μl(67%)を認め,またIgEおよびeosinophil cationic protein(ECP)の増加を認めた.好酸球増多が6ヶ月以上持続し,アレルギー性疾患や骨髄増殖性疾患を認めず反応性好酸球増多症は否定的であり,特発性好酸球増多症と診断し,多発性脳梗塞は本症に続発した病態と考えられた.入院時胸部聴診上,心雑音を認めたため経胸壁心エコー図検査を施行した.左室壁肥大はなく,左室容量や壁運動は正常であったが,大動脈弁に20mm大の異常構造物,僧帽弁に前尖と後尖を架橋する異常構造物を認め,軽度大動脈弁逆流と軽度僧帽弁開放制限を認めた.レボビストによるコントラスト心エコー図では左室腔内に不染領域を認めず,壁在血栓は認めなかった.好酸球増多によるレフレル心内膜炎と診断し,プレドニゾロンとワルファリン投与を開始した.好酸球数,IgE,ECPは漸減し,心エコー図では徐々に両弁尖の異常構造物は縮小し,最終的には弁の変性,軽度大動脈弁逆流,僧帽弁逆流は残存したものの,大動脈弁の異常構造物は著明な縮小を認め,僧帽弁の異常構造物はほぼ消失し,僧帽弁の開放制限も改善した.レフレル心内膜炎は好酸球増多による心内膜障害の総称である.心腔内血栓や弁破壊による房室弁逆流はよく知られているが,本例のように心腔内血栓がみられず,大動脈弁,僧帽弁の両弁に異常を来すことは稀である.本例では心エコー図検査によりレフレル心内膜炎を早期に診断し,可及的速やかに行った薬物療法により著明な改善を認め,異常構造物は縮小,消失し,良好な経過が得られたと考えられる.特異な心エコー図所見を呈したレフレル心内膜炎の1例を経験したため文献的考察を加え報告する.