Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:症例1

(S361)

3D経食道エコーが形態診断に有用であったdiscrete subaortic stenosisの一例

A case of discrete subaortic stenosis that three-dimensional transesophageal echocardiography was useful for diagnosis.

松之舎 教子1, 森澤 大祐2, 齊藤 哲也3, 関家 季実子1, 上田 政一1, 今井 道生2, 正井 崇史3, 岩倉 克臣2, 藤井 謙司2

Michiko MATSUNOYA1, Daisuke MORISAWA2, Tetsuya SAITO3, Kimiko SEKIYA1, Masakazu UEDA1, Michio IMAI2, Takashi MASAI3, Katsuomi IWAKURA2, Kenshi FUJII2

1桜橋渡辺病院検査科, 2桜橋渡辺病院循環器内科, 3桜橋渡辺病院心臓血管外科

1Department of Cardiovascular Imaging, Sakurabashi Watanabe Hospital, 2Department of Cardiology, Sakurabashi Watanabe Hospital, 3Department of Cardiovascular Surgery, Sakurabashi Watanabe Hospital

キーワード :

症例は33歳の男性.小学生の頃より心雑音を指摘されるも,無症状であり特に精査されていなかった.今回,健診にて心雑音を指摘され当院紹に紹介となった.身体所見は呼吸音は純,心音は大動脈弁領域を中心に収縮期雑音(Levine Ⅲ-Ⅳ/Ⅵ)を聴取した.心電図・胸部X線では特に異常所見を認めなかった.経胸壁心エコーにて左室流出路(LVOT)に膜様構造物を認め(図1矢印),66mmHgの最大流出路圧較差を認めた.エコー設定断面によっては膜様構造物が僧帽弁前尖の一部に連続して見えるため,僧帽弁副組織との鑑別が必要と考えられた.また中等度の大動脈弁閉鎖不全症(AR)と軽度の左室肥大を認めたが,壁運動異常はなくEF 68%と左室機能は正常であった.更なる精査の為,3D経食道エコーを実施したところ,左室流出路の2/3周(無冠尖〜右冠尖遠位)にわたる厚い膜様構造物を認めた(図2矢印)が,僧帽弁弁輪と膜様構造物の間には明らかな連続性は認められず僧帽弁副組織の可能性は低いと考えられた.左室流出路圧較差から手術適応と考えられ,膜様構造物の切除及びARに対する大動脈弁形成術を実施した.術中所見はLVOTに無冠尖〜右冠尖側を中心として,ほぼ全周性の繊維性のshelf状を呈す構造物を認め,discrete subaortic stenosis(大動脈弁下狭窄:膜性狭窄型)と診断された.また線維性の構造物は一部僧帽弁前尖付着部にまで及んでおり,経胸壁心エコー所見と一致した.病理所見では線維組織の層構造を認めたが,僧帽弁副組織とdiscrete subaortic stenosisの鑑別診断には至らなかった.Discrete subaortic stenosisは稀な先天性心疾患であり,本例では術前に僧帽弁副組織との鑑別が必要であった.3D経食道エコーは術前の組織性状の把握および鑑別診断に有用であった.