Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:心不全

(S360)

左室駆出率の保たれた心不全例において左室内腔形態が球形に近いほど予後不良である

Spherical Ventricular Chamber is a Predictor of Poor Prognosis of Heart Failure with Preserved Systolic Function

奥平 久美子1, 合田 亜希子1, 小松 知広2, 中坊 亜由美2, 増山 理2, 飯島 尋子1

Kumiko OKUDAIRA1, Akiko GODA1, Tomohiro KOMATSU2, Ayumi NAKABOH2, Tohru MASUYAMA2, Hiroko IIJIMA1

1兵庫医科大学病院超音波センター, 2兵庫医科大学病院内科学 循環器内科

1Department of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, 2Department of Internal Medicine, cardiovascular, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【背景】
心不全症例の 40〜50%は左室駆出率が保持されている,あるいは軽度低下にとどまる.この心不全発症の病態は,左室拡張機能障害がおもな要因とされ,“拡張不全(HFPEF:heart failure with preserved ejection fraction)”とよばれている.一方,左室駆出率が低下した収縮不全(HFREF:heart failure with reduced ejection fraction)では心機能が悪化するにしたがって,左室内腔形態は楕円形から球形へと変化することが知られている.しかし,HFPEFにおける左室内腔形態については明らかではない.
【目的】
HFPEF患者において,左室内腔形態と予後との関連について明らかにすること.
【方法】
2005年2月から2009年7月までに急性心不全にて入院となったHFPSF 患者(EF≧50%)のうち,治療により軽快退院でき,かつ入退院前後に心エコー図検査にてフォローアップできた52人(男性29人,平均年齢72±10歳)を対象とした.人工弁,僧帽弁狭窄症と重症弁膜症については,左室形態が大きく変化するため除外とした.心エコー図検査にて心尖部四腔像における拡張末期左室長径と短径を計測し,左室内腔形態の指標として長径/短径をsphericity index (SI)として算出した.エンドポイントを総死亡とうっ血性心不全による再入院としてSIとの関連について検討した.
【結果】
平均691日間の観察期間の間に14人(27%)にエンドポイントを認めた(死亡5人).エンドポイント有り群は無し群に比較し,有意にSIは低値であり,左室内腔形態は球形を呈していた(1.66±0.06 vs. 1.82±0.04,p<0.05).退院時EFおよび左房圧の指標であるE/e’は2群で有意差を認めなかった.Kaplan-Meier曲線では球形群(SI≦1.7)が楕円群(SI>1.7)に比較し,有意に死亡・心不全による再入院が多く,予後不良であった(p<0.05).
【結論】
HFPEFにおいても左室内腔形態が球形に近いほど予後不良であり,左室内腔形態を評価することで予後を予測できる可能性が示唆された.