Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:症例1

(S360)

家族歴を有する粘液腫再発例

The case report of myxoma recurrence with family history

安田 英明1, 今村 啓史1, 後藤 孝司1, 橋ノ口 由美子1, 杉田 文芳1, 田内 宣生2, 倉石 建治2, 西原 栄起2, 玉木 修治3

Hideaki YASUDA1, Keishi IMAMURA1, Takashi GOTO1, Yumiko HASHINOKUCHI1, Fumiyoshi SUGITA1, Nobuo TAUCHI2, Kenji KURAISHI2, Eiki NISHIHARA2, Shuji TAMAKI3

1大垣市民病院診療検査科形態診断室, 2大垣市民病院小児循環器, 3大垣市民病院心臓外科

1Clinical Reserch, Ogaki Municipal Hospital, 2Pediatrics Cardiology, Ogaki Municipal Hospital, 3Cardiovasucular Surgery, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
心臓腫瘍は他臓器の腫瘍に比して非常に稀であり,原発性腫瘍はその75%が良性である.粘液腫は,その50%を占めている.発生部位は左房が最も多く75%で,右房は15〜20%である.次いで左室,右室の順に発生することが知られている.心エコー図では,腫瘍エコーの大きさ,形状,表面・内部の性状,茎の有無を観察,確認する必要がある.
【症例】
発見時年齢12歳3ヶ月,女児 身長=148.2cm,体重=36.2kg 2回目手術時年齢13歳5ヶ月 身長=152cm,体重=40.7kg 3回目手術時年齢15歳9ヶ月 身長=152cm,体重=48.6kg
【既往歴】
特になし
【家族歴】
母親が1990年8月に右房粘液腫で手術.2006年12月右室内再発で手術.妹は現在のところ異常なし.
【経過】
2006年5月2日 学校健診で心音異常を指摘され近医受診.心エコー検査で僧帽弁前尖に腫瘤像を認め,当院小児循環器科へ紹介される.心エコー検査にて僧帽弁前尖左室側に,24×22mm,12×9mmの腫瘤像を認めた.収縮期には左房に入り込んでいた.僧帽弁逆流は,わずかに認めたが,僧帽弁狭窄,左室流出路狭窄は認めなかった.左室拡張末期径=48mm,左室駆出率=61.9%であった.5月8日開胸手術施行.乳頭筋由来の左室粘液腫と診断.僧帽弁温存不能と判断され,僧帽弁置換術が施行された.その後1月毎に心エコー検査にて経過観察された.2007年5月8日心エコーにて左房内に小さな腫瘤像を認めた.血栓と判断され,5月15日からバファリン併用開始.7月12日心エコーにて右室内中隔側に16×7mmの高エコー腫瘤を認めた.7月20日MRI施行.T2強調画像にて右室中隔に接して高信号域を認めた.8月8日再手術施行.三尖弁下の右室中隔,後中隔高連に近い部分に20×10mm大の広基性の粘液腫を認めた.また,心房中隔下部の左房内膜にも15mm程度の広基性の粘液腫を認めた.その後再び1月毎に心エコー検査にて経過観察された.2008年12月4日心エコーにて右房内に7mm大の腫瘤像を認めた.2009年1月8日右房内の腫瘤が13mmに増大し,再発と診断.1月30日MRIを施行するも描出できず.2度目の再発ということで,しばらく経過観察となる.7月20日腫瘤は20mm大に増大し,三尖弁に近づいた.その後も月1回の経過観察を続け,12月16日3回目の手術となった.腫瘍は20mm大で,下大静脈,三尖弁,冠動脈洞に挟まれた領域に存在した.
【考察】
粘液腫の術後再発率は1〜3%と低いが,10年以上経ってから再発する例もあるとされている.今回の例でも,母親は術後16年経って再発している.また,家族性粘液腫の術後再発率は高く12〜22%とされている.本症例においては,術後2年半という短期間の間で2度再発した.しかも,母親と同様に発生頻度が一番低い右室にも再発しており,稀なケースと思われた.
【結語】
粘液腫で2回手術している母親をもつ娘の粘液種が,2度再発した例を経験した.